イロクォイ級ミサイル駆逐艦

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イロクォイ級ミサイル駆逐艦
HMCS Algonquin (DDH 283)3.jpg
DDG-283 アルゴンキン
TRUMP改修後の、防空艦仕様。
艦級概観
艦種 ヘリコプター駆逐艦 (DDH、新造時)
ミサイル駆逐艦 (DDG、TRUMP改修後)
建造期間 1969年 - 1971年
就役期間 1972年 -
前級 アナポリス級駆逐艦
次級 プロヴァンス級ミサイル駆逐艦
主要諸元
#諸元表を参照
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イロクォイ級ミサイル駆逐艦(イロクォイきゅうミサイルくちくかん、Iroquois-class destroyers)はカナダ海軍駆逐艦トライバル級Tribal-class)とも通称される。[1]

当初計画ではターター艦対空ミサイルを搭載する防空艦8隻を整備するとされたが予算の都合により断念、代わって本級が整備されることとなり1972年から1973年にかけて4隻が就役した。建造当初はヘリコプター搭載の対潜艦だったが、1980年代後半より大規模な改修を受けて、防空艦となった。

概要[編集]

TRUMP改修前の、ヘリコプター駆逐艦時代のDDH-280 イロクォイ。
艦首部分にオート・メラーラ 127mm砲を搭載し、艦橋前部の構造物にシースパローPDMSランチャーを格納している。
煙突も左右2本に分かれており、外側に傾斜している。

本級は、カナダ海軍として初めてヘリコプターを2機搭載しているほか、世界で初めてCOGOG方式の機関を搭載しており、卓越した対潜戦プラットフォームとして完成した。

当時、5,000トン級の艦艇でシーキング級の大型哨戒ヘリコプターを2機搭載した例はほかになく、カナダが開発したベア・トラップ着艦拘束装置導入に拠るものである。同装置は海上自衛隊にも導入され、はるな型ヘリコプター護衛艦を始めとするヘリコプター搭載艦に装備された。

また、カナダ海軍として初めてオート・メラーラ 127 mm 砲シースパロー個艦防空ミサイルを装備し、より幅広い任務への対応が期待された。シースパロー艦対空ミサイル発射機は、アメリカ合衆国NATO諸国などで運用されている8連装の箱型発射機Mk25やMk29ではなく、カナダ独自に開発された4連装発射機2基で、レール式の発射機は普段構造物に格納され、発射時に外部に露出されるようになっていた。

1980年代後半より、本級はTRUMP(Tribal Class Update and Modernization Project)改修により、防空艦として生まれ変わった。これは主機・武装・電子機器の換装・強化を含む、極めて大規模な改修であった。艦首に搭載されていたオート・メラーラ 127 mm 砲は撤去され、ここにスタンダードSM-2MR用として、29セルのMk 41 Mod T VLSが収容された。一方、艦橋前方に設置されていたシースパロー個艦防空ミサイルの発射機も撤去され、跡にはオート・メラーラ 76 mm 砲が設置された。また、レーダーもより新型で強力なものに変更されたが、防空艦が通常搭載する3次元レーダーについては、コストの問題から搭載されなかった。この際、ソナーも新型に換装され、リンボー対潜臼砲は艦前部の装備換装に伴うスペース捻出の為撤去されたが、航空設備と対潜魚雷発射管は維持され、本級の対潜戦闘能力は保持されたと言える。機関に関しても、巡航用ガスタービンが換装され、併せて新造時2本あった煙突も大型の1本煙突に換装された。

本級は、2010年代初頭には全艦が退役する計画となっている。2005年には、海軍の縮小によって運用人員を確保できなくなったことから、2番艦「ヒューロン」(HMCS Huron)が退役した。現在、本級と、あるいはハリファックス級フリゲートの一部艦を代替するため、カナダ単一艦級水上戦闘艦計画(Canadian Single Class Surface Combatant)の策定が進められている。

諸元表[編集]

ヘリコプター駆逐艦(新規建造時) ミサイル駆逐艦(TRUMP改修後)
排水量 満載: 4,700 t 満載: 5,300 t
全長 128.9m
全幅 15.2m
吃水 4.42m
機関 COGOG方式、2軸推進
P&WFT12-AH3 ガスタービン×2基
(7,400 shp; 巡航用)
アリソン 570-KF ガスタービン×2基
(12,788 shp; 巡航用)
P&W FT4A ガスタービン×2基
(51,000 shp; 加速用)
最大速力 29 kt
航続距離 4,500 nmi
乗員 285名
武装 127mm単装速射砲×1基 76mm単装速射砲×1基
Mk.10 リンボー対潜臼砲 ×1基 ファランクス 20mm CIWS×1基
シースパロー短SAM4連装発射機×2基 Mk.41 Mod.T VLS
(29セル; SM-2MR SAM用)×1基
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基
艦載機 CH-124 シーキング 哨戒ヘリコプター×2機
C4I CCS-280 戦闘情報システム (SHINPADS + リンク 11 / 14)
レーダー SPS-501 (LW-03) 2次元対空捜索 SPQ-502 (LW-08) 2次元対空捜索
SPQ-2D 低空警戒/対水上捜索 SPQ-501 (DA-08) 低空警戒/対水上捜索
FCS WM-22 射撃指揮レーダー×2基 SPG-501 STIR 1.8 射撃指揮レーダー×2基
Mk.60 砲FCS×1基 LIROD 砲FCS×1基
ソナー SQS-505 艦首装備+可変深度 SQS-510 艦首装備+可変深度
電子戦 AN/WLR-1 ESM SLQ-501 ESM
AN/ULQ-6 ECM SLQ-503 ECM
コンバス チャフフレア発射機 プレッシー SHIELD チャフ・フレア発射機
Mk 53 Nulka 囮展開装置

同型艦[編集]

艦番号 艦名 起工 進水 就役 退役
DDH-280
DDG-280
イロクォイ
HMCS Iroquois
1969年1月15日 1970年11月28日 1972年7月29日 2010年代初頭(予定)
DDH-281
DDG-281
ヒューロン
HMCS Huron
1969年6月1日 1971年4月9日 1972年12月16日 2005年3月31日
DDH-282
DDG-282
アサバスカン
HMCS Athabaskan
1969年6月1日 1970年11月27日 1972年9月30日 2010年代初頭(予定)
DDH-283
DDG-283
アルゴンキン
HMCS Algonquin
1969年9月1日 1971年4月23日 1973年11月3日 2010年代初頭(予定)

脚注[編集]

  1. ^ www.hazegray.orgでは、TRUMP改修以前をトライバル級、TRUMP改修以後をイロクォイ級として区別している。

参考文献[編集]

関連項目[編集]