イブン・ハンバル

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イブン・ハンバルアラビア語: احمد ابن حنبلAḥmad ibn Ḥanbal, 780年 - 855年)は、イスラーム法学者ハディース学者。ハンバル学派の名祖。主著に『ムスナド』(al-Musnad)がある。

生涯[編集]

780年、バグダードで生まれた。青年期にイラク、ヒジャーズ、イエメン、シリア、イラン、ホラーサーン、マグレブと遍歴して学問を続けた。ハディース(ムハンマドの言行録)を重視する立場をとり、多くのハディースを収集しまとめていった。厳格なハディース解釈を尊重するため、イスラーム神秘主義的な考え方を批判し、のちのワッハーブ運動にも影響を与えた。当時のアッバース朝カリフであるマームーンが採用していたムウタズィラ派神学の立場を否定したことから一時投獄された。855年、バグダードで死去。

著作[編集]

イブン・ハンバルはハンバル学派の名祖として有名であるが、9世紀を代表する高名なハディース学者でもあった。彼が生涯に渡って収集したハディースは彼の息子や弟子たちが集成したものを含めて『ムスナド』( المسند al-Musnad)として編纂された。「ムスナド」とはハディース集の様式のひとつのことであり、通常、ハディースは伝承経路(イスナード)と本文(マトン)とからなるが、預言者ムハンマドの言行を伝えた教友(サハーバ)ごとに配列されたものを言う。

ハディースは本文と伝承経路を併せて記憶されるもので、ムスナドは伝承経路の区分を意図したものであり、信憑性の高低に関わらず同系統の伝承情報を一括できるという利点がある。そのため、特定のハディースを検索・抽出するのには専門家でなければ扱いづらいものの、法学者やハディース学者など法学関係の専門家にとって有益なハディース集の様式である。特に、イブン・ハンバルの『ムスナド』は、ムスナド様式のハディース集としてはスンナ派で非常に信憑性の高いハディース集として尊重されてきたものである。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 「イブン・ハンバル」(柳橋博之)、「ムスナド」(小杉泰)『岩波 イスラーム辞典』岩波書店、2002年
  • 佐藤次高 『イスラームの国家と王権』 岩波書店、2004年