アントニー・ホーア
| チャールズ・アントニー・リチャード・ホーア | |
|---|---|
EPFLでのカンファレンスにて(2011年6月20日)
|
|
| 人物情報 | |
| 誕生 | 1934年1月11日(79歳) |
| 居住 | |
| 学問 | |
| 研究分野 | 計算機科学 |
| 研究機関 | エリオット・ブラザーズ クイーンズ大学ベルファスト オックスフォード大学 モスクワ大学 マイクロソフトリサーチ |
| 母校 | オックスフォード大学 モスクワ大学 |
| 主な業績 | クイックソート ホーア論理 CSP |
| 主な受賞歴 | チューリング賞 (1980) |
チャールズ・アントニー・リチャード・ホーア(Charles Antony Richard Hoare、1934年1月11日 - )[1]はイギリスの計算機科学者。通称はトニー・ホーア(Tony Hoare)またはC・A・R・ホーア。
1960年に26歳でクイックソートを開発したことで最もよく知られる。これは世界で最も広く使われているソートアルゴリズムであり、恐らくあらゆる種類のアルゴリズムの中でも、世界で最も広く使われているものであろう。
彼はまたホーア論理や、形式言語の1つで並行プロセス間の通信を記述するのに使われるCommunicating Sequential Processes(CSP)の開発、またプログラミング言語Occamに示唆を与えた事でも知られる。
目次 |
経歴 [編集]
スリランカのコロンボにてイギリス人の両親の元に生まれた。1956年にオックスフォード大学にて西洋古典学の学士号を取得。 その後オックスフォード大に1年残って大学院相当の統計学を学ぶ。1956年から1958年までイギリス海軍で兵役に就く。そしてソビエト連邦のモスクワ大学にてロシア語を学ぶと同時に、自然言語の機械翻訳について研究を始める。
1960年、エリオット・ブラザーズ社という小さなコンピュータ製造会社にて仕事を始め、ここで ALGOL 60 を実装、各種アルゴリズムの開発に本格的に着手する[2]。1968年にはクィーンズ大学ベルファスト校で計算機科学の教授となり、1977年にはオックスフォードに戻ってコンピューティングの教授となり、クリストファー・ストレイチーの死に伴ってオックスフォード大学コンピューティング研究所(現在の計算機科学科)プログラミング研究部門を指揮するようになった。現在彼は同大学の名誉教授であり、イギリスケンブリッジのマイクロソフト リサーチの主任研究者でもある。
主な研究業績としては、ソートアルゴリズム(クイックソート)、ホーア論理、形式言語 Communicating Sequential Processes (CSP) を使った並行プロセスの相互作用の記述、モニタの概念を使った構造化オペレーティングシステム、プログラミング言語の公理的意味論などがある[3][4]。
語録 [編集]
有名な「小さな効率は忘れよう。時間の97%について語ろう。早まった最適化は諸悪の根源だ。」という引用句はドナルド・クヌースのものである[6] 。クヌース自身はホーアの言葉だと述べているが[7]、ホーア自身はそれを否定している[8]。
また、複雑すぎないソフトウェアシステムを作成する困難さについて次のように述べている。
ソフトウェアを設計するには2通りの方法がある。1つはとてもシンプルに設計して、明らかに欠陥がないようにすること。もう1つは、とても複雑に設計して明らかな欠陥がないようにすることだ。前者の方がはるかに困難である。[3]
1995年には独自の考え方を考察している[9]。
10年前、形式手法の研究者ら(特に私)はプログラミングが安全性と重要性を増す際に形式手法が約束した補助が大いに感謝されるだろうと予測していた。今日のプログラムは、形式手法が通用するスケールを遥かに越えて非常に巨大化し重要になっている。多くの問題と失敗があったが、それらの多くは要求仕様の不十分な分析とマネジメントの不足に起因している。当初我々が解決しようとしていた種類の問題は、世界に損害を与えるものではなかったことがわかってきた。
2009年のカンファレンスでNull参照を発明したことについて謝罪している。[10][11]
それは10億ドルにも相当する私の誤りだ。null参照を発明したのは1965年のことだった。当時私はオブジェクト指向言語 (ALGOL W) における参照のための包括的型システムを設計していた。目標はコンパイラでの自動チェックで全ての参照が完全に安全であることを保証することだった。しかし、私は単にそれが容易だというだけで、無効な参照を含める誘惑に抵抗できなかった。これは後に数え切れない過ち、脆弱性、システムクラッシュを引き起こし、過去40年間で10億ドル相当の苦痛と損害を引き起こしたとみられる。
受賞歴 [編集]
- 1980年 - "プログラミング言語の定義と設計に対する彼の基礎的な貢献"に対してACMチューリング賞を受賞。同賞は1980年10月27日、テネシー州ナッシュビルで開催されたACM大会にて、同賞の評議会議長であるウォルター・カールソンから授与された。受賞講演の記録[3]は、Communications of the ACM 誌に掲載された[2]。
- 1981年 - Harry H. Goode Memorial Award (IEEE Computer Society)
- 1982年 - 王立協会フェロー
- 1987年 - 名誉博士号(クイーンズ大学ベルファスト)
- 1993年 - 名誉博士号(バース大学)[12]
- 2000年 - ナイトに叙される。
- 2000年 - 京都賞先端技術部門
- 2005年 - 英国王立工学アカデミーフェロー
- 2006年 - コンピュータ歴史博物館フェロー
- 2007年 - 名誉博士号(ギリシャの Athens University of Economics and Business)
- 2011年 - IEEEフォン・ノイマンメダル[13]
著作 [編集]
- O.-J. Dahl, E. W. Dijkstra and C. A. R. Hoare (1972). Structured Programming. Academic Press. ISBN 0-12-200550-3. OCLC 23937947.
- C. A. R. Hoare (1985). Communicating Sequential Processes. (available online at http://www.usingcsp.com/ in PDF format). Prentice Hall International Series in Computer Science. ISBN 0-13-153271-5 hardback or ISBN 0-13-153289-8 paperback.
- C. A. R. Hoare and M. J. C. Gordon (1992). Mechanised Reasoning and Hardware Design. Prentice Hall International Series in Computer Science. ISBN 0-13-572405-8. OCLC 25712842.
- C. A. R. Hoare and He Jifeng (1998). Unifying Theories of Programming. Prentice Hall International Series in Computer Science. ISBN 0-13-458761-8. OCLC 38199961.
脚注 [編集]
- ^ “Birthdays Jan 10”. The Times (London). (2009年1月10日) 2010年1月9日閲覧。
- ^ a b C.A.R. Hoare (February 1981). “The emperor's old clothes” (PDF). Communications of the ACM 24 (2): 5–83. doi:10.1145/358549.358561. ISSN 0001-0782.
- ^ a b c Hoare, Charles Anthony Richard (1980年10月27日). “The Emperor's Old Clothes / The 1980 ACM Turing Award Lecture”. Association for Computing Machinery. 2012年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月16日閲覧。
- ^ ACM Turing Award citation.
- ^ “Fellows”. Royal Society. 2010年11月20日閲覧。
- ^ Knuth, Donald: Structured Programming with Goto Statements. Computing Surveys 6:4 (1974), 261–301.
- ^ The Errors of Tex, in Software—Practice & Experience, Volume 19, Issue 7 (July 1989), pp. 607–685, reprinted in his book Literate Programming (p. 276)、『文芸的プログラミング』p. 356
- ^ Hoare, a 2004 email.
- ^ Hoare, C. A. R. (1996). “Unification of Theories: A Challenge for Computing Science”. Selected papers from the 11th Workshop on Specification of Abstract Data Types Joint with the 8th COMPASS Workshop on Recent Trends in Data Type Specification. Springer-Verlag. pp. 49-57. ISBN 3-540-61629-2
- ^ Hoare, Tony (2009年3月9日). “Null References: The Billion Dollar Mistake”. 2012年8月16日閲覧。
- ^ Hoare, Tony (2009年8月25日). “Null References: The Billion Dollar Mistake”. InfoQ.com. 2012年8月16日閲覧。
- ^ “Honorary Graduates 1989 to present”. bath.ac.uk. University of Bath. 2012年2月18日閲覧。
- ^ “IEEE John von Neumann Medal Recipients”. IEEE. 2011年2月26日閲覧。
参考文献 [編集]
- Bowen, Jonathan (2006-09-08). “Oral History of Sir Antony Hoare”. Hoare (Sir Antony, C.A.R.) Oral History, CHM Reference number: X3698.2007 (Computer History Museum) 2011年10月23日閲覧。.
- Shustek, Len, ed (March 2009). “An Interview with C.A.R. Hoare”. Communications of the ACM 52 (3): 38–41. doi:10.1145/1467247.1467261.
外部リンク [編集]
- Microsoft home page — 略歴
- Oral history interview with C. A. R. Hoare at Charles Babbage Institute, University of Minnesota, Minneapolis.
- List of publications from the DBLP Bibliography Server
- List of publications from the Microsoft Academic Search
- モニタに関する古典的論文 — モニタについての最初の文論
- CSPコンソーシアム