アレックスキッド

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アレックスキッド
Alex Kidd
アレックスキッドシリーズのキャラクター
初登場作品アレックスキッドのミラクルワールド (1986年)
声優井上喜久子(メイン)

アレックスキッドAlex Kidd)は、セガ[1]ビデオゲームに登場するキャラクター。を擬人化したような姿を持つキャラクターで、『ファンタジーゾーン』の「オパオパ」と並び、ソニック・ザ・ヘッジホッグ(ソニック)が登場するまでの1980年代にセガのマスコットキャラクターを担当していた[2][3]。略称は「アレク」。フルネームは「アレックス・キッド・オサール」で、これは「オサール家の王子」を意味している。

設定[編集]

アリエス星という惑星に住んでおり、マウンテン山で「ブロッ拳」という奥義の鍛錬に励んでいた。好きなものはおにぎり(日本国外版ではハンバーガーに変更されている)。

アレックスキッドのデビュー作である『アレックスキッドのミラクルワールド』は、公式には「セガ・マークIIIにおいて『スーパーマリオブラザーズ』のように売れるアクションゲーム」として企画され、『ミラクルワールド』の左ボタンジャンプや、パンチによる攻撃(マリオはジャンプで上に攻撃するのに対し、アレクはパンチで横に攻撃)、乗り物、ボス戦のジャンケンなどはその一環として作られたものであるとされている[4]

セガ社員として当時から所属している小玉理恵子によると、日本では1990年代以降アレックスキッドは忘れられた存在になり、『セガガガ』(#ゲスト出演でも簡単に解説)で初めて存在を知ったファンも多かったという。ただし、後に小玉が関わったNintendo SwitchSEGA AGESでは『ミラクルワールド』が移植リリースされている。これはスタッフによると欧州圏や南米圏など、セガハードのシェアが確固たる地位にあった地域において「アレックスキッド」というキャラは現在でもソニックに劣らない知名度があり、ファンが数多くいるためにセガのレトロゲームを現行機種に移植リリースするといった海外展開を行う上では無視できないほどであるからだと述べられている[5]。南米における人気の一例としては、テレビ東京系のバラエティ番組『YOUは何しに日本へ?』2020年6月29日放送回で、アルゼンチンに在住していたあるクリエイターがアレックスキッドを題材に膨大な小説を書いて来日、出版社に持ち込んで売り出すための前提としてセガ本社へ許可を貰うためアポイントメントなしで訪問を試みるなどの行状が放送されている[6](なお、この小説は少なくとも日本では出版されていない)。

登場するゲーム[編集]

『アレックスキッド』シリーズ[編集]

シリーズ初にして現在でも最高峰との評が高い作品。欧米での評価は今日でも極めて高く、2017年[7]から2019年[8]に掛けてリリースされた複数の同人ゲームでも本作のシステムが踏襲されており、ファンの間では公式シリーズを越えた続編作品として受け入れられた経緯がある。
ミラクルワールドと同時期にアーケード部門のセガ第一研究開発部(後のセガ第1AM研究開発部)で開発されていた作品[9]。「ウィズ・ステラ」のタイトルにもある通り、2P同時プレイが可能な事が最大の特徴で、1Pプレイヤーはアレク王子、2Pプレイヤーは長髪で黄色いリボンと青いトラックスーツを身に付けた女性キャラクターである「ステラ姫[10]」を操作することになる。攻撃手段はパンチではなく、アイテムの取得により一定時間発射可能なショットによるもので、Hiro師匠作曲のBGMや二重スクロールするパステルカラー調の背景、インストラクションカードの可愛らしいキャラクターデザイン[11]などで一定のギャルゲーファンの獲得に貢献した。パンチ攻撃やジャンケンの要素がなくなったものの、非常に難易度が高かった事から純然たるジャンプアクションとしてやり込み要素も十分にあったと評価されている[12]
2020年12月にセガトイズがリリースした家庭用ゲーム機・アストロシティミニに、後述する家庭用アレンジ移植版ではないオリジナル版の移植・収録が初めて実現した(アストロシティミニの細かい仕様については当該項目先を参照)。
パドルコントローラを必須とする作品で、アレックスキッドが登場し、ラダクシャンが舞台である事以外はミラクルワールドとの共通点が無い。セガは同時期にミラクルワールドのボードゲーム(後述)もリリースしており、「セガ自身はミラクルワールドが何故大きな成功を収めたか」についての本質を正確に理解していなかったため、本作のようなシリーズの展開の迷走をうかがわせる作品が登場する事になったとされている[13]
1986年のアーケードの同名作品の移植作。マスターシステム初の音声合成を導入した作品として話題となったが、アーケード版が稼働していなかった欧米では[9]、本作はミラクルワールドと比較してパンチ攻撃やジャンケンの要素がなくなったためにゲーム性が大幅に低下し、シリーズの評価を却って落としてしまったとも評されている[14]。アーケード版が好評であった日本市場でも、本作はアーケード版の美麗なグラフィックが再現できず、2Pキャラのステラ姫が削除されてしまった事や、ショットが時間制限制から残弾制に、残機制がライフ制に変更されるなどゲーム自体の難易度が過度に低められてしまった事から移植作としての評価は高くなく、失敗作であったと認知されている[12]
タイトルにある「ハイテクワールド」とは、本作でアレックスキッドが向かうゲームセンターの名前。日本では『あんみつ姫』としてリリースされた作品で、元々は原作漫画のプロットに沿って謎解きをしていくシステムであったため、欧米のファンは謎解きに苦労することになった。また、操作キャラクターのみを無理矢理アレックスキッドに置き換えたゲームデザインのため、唐突に日本人の両親が登場するなど、ミラクルワールドや後発の天空魔城との致命的な設定矛盾を抱え込むことになり、シリーズのファンを失望させたとの評価がある[13]
パンチ攻撃やジャンケン(実際には野球拳である)の要素を復活させたが、癖のあるジャンプアクションやパンチ攻撃の当たり判定の厳しさなど、全体の操作性の悪さから良い評価は得られなかった[15]。シリーズ中の失敗作であり、これを機に国内ではシリーズ後発作のリリースが途絶えた。ソニック・ザ・ヘッジホッグの登場はこの失敗によるアレックスキッドのセガのマスコットキャラとしてのブランド力低下が影響したという見方もある[2]
アレックスキッドの世界観にマークIII版『忍 -SHINOBI-』のゲームシステムを融合させたアクションゲーム。一部の音楽は『忍』のものがアレンジされて使われている。コンピュータ・アンド・ビデオゲーム英語版誌や[16]セガ・プロ英語版誌など[17]で欧米のレビュアーから非常に高い評価が与えられていたが、セガは翌1991年のソニックの大成功を受けてアレックスキッドに見切りを付け、次回作の開発を行わない決定をしたとされている[13]
35年前に発表されたシリーズ初作品『アレックスキッドのミラクルワールド』を現代風にリメイクした作品。本作発表まで事実上シリーズ最終作であった『アレックスキッドのシノビワールド』から実に31年ぶりのシリーズ新作となる。

ビデオゲーム以外[編集]

  • 1987年 - アレックスキッド ゲーム ミラクルワールド大冒険(ボードゲーム

ゲスト出演[編集]

ロードのアイテムパネル。
アレックスキッドをモチーフにしたたまごっち「あれくっち」が登場。
オープニングムービーにゲームを紹介するMC的役割で登場[19]。同シリーズでは『アレックスキッドのミラクルワールド』もリリースされているが、この際はアレクが奥の画面を紹介し、そこに飛び込んでゲームが始まるという流れになる。
復刻系携帯ゲーム機。ゲーム自体は収録されていないが、このゲーム機がバッテリー切れを起こしそうになる時、いくつかある警告画面イラストの1つにアレクとステラが登場している。

余談[編集]

『ミラクルワールド』の企画設計に携わった林田浩太郎によると、同作は元々は漫画『ドラゴンボール』のゲーム化作品として開発がスタートしていたが、セガ本社がドラゴンボールの版権取得に失敗した為に、やむなくキャラクターデザインを全面的に変更してリリースに漕ぎ着けたという経緯があったことが証言されている。元々の企画では「主人公(孫悟空)は如意棒でザコ敵を攻撃し、ボス戦では悟空の最初期の必殺技であるジャン拳で決着を付ける」という設定であったという[20]

脚注[編集]

  1. ^ アレックスキッドの知的財産権は現在セガが保有しているが、2015年4月1日から2020年3月31日まではセガグループの再編に伴うからみで旧:株式会社セガからセガホールディングス(後のセガグループ)へ移動していた(2020年4月1日からは当日に発足した2代目・セガに移動し現在に至る)。
  2. ^ a b 株式会社QBQ編 『懐かしのメガドライブ 蘇れメガドライバー !!』マイウェイ出版発行、2018年。ISBN 9784865118704 p24
  3. ^ Remembering Sega's Exiled Mascot - Kotaku Australia
  4. ^ 名作アルバム VOL.4 アレックスキッドのミラクルワールド”. セガ. 2012年6月16日閲覧。
  5. ^ 【インタビュー】「SEGA AGES アレックスキッドのミラクルワールド」インタビュー - GAME Watch
  6. ^ 本日(6/29)18:25〜テレ東『YOUは何しに日本へ?』セガ・アレックスキッドを愛しすぎたアルゼンチン人がアポなし訪問 - ファミ通.com
  7. ^ Alex Kidd in Miracle World 2 - Sega8bit.com
  8. ^ Alex Kidd 3 Curse In Miracle World - High grade SMS fan game is coming soon - Indie Retro News
  9. ^ a b Alex Kidd: The Lost Stars - Sega Retro
  10. ^ Stella - Alex Kidd Wiki
  11. ^ インストカード(その3) - 198X-02
  12. ^ a b マークIII→アーケード→そしてマークIIIへ!「アレックスキッド」 - ABSYMBEL〜移植ゲーム研究所〜
  13. ^ a b c Alex Kidd - Sega8bit.com
  14. ^ Alex Kidd: The Lost Stars Review - IGN、2008年10月24日
  15. ^ Alex Kidd in the Enchanted Castle Review - IGN、2007年4月19日
  16. ^ “Alex Kidd in Shinobi World: By Sega”. Computer and Video Games (106). (September 1990). http://www.smspower.org/Reviews/AlexKiddInShinobiWorld-SMS-CVG-106 2012年2月9日閲覧。. 
  17. ^ “Sega Software Showdown”. Sega Pro (1): 19. (November 1991). 
  18. ^ 「ソニック&オールスターレーシング TRANSFORMED」アレックスキッド参戦”. 4Gamer.net (2014年6月3日). 2019年2月21日閲覧。
  19. ^ 「SEGA AGES アレックスキッドのミラクルワールド」インタビュー”. GAME Watch (2019年2月21日). 2019年2月21日閲覧。
  20. ^ Alex Kidd In Miracle World Was Supposed To Be A Dragon Ball Game - Nintendo Lifeスペイン語版

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

※下記バーチャルコンソールのサイトに「クリックでムービーを再生」とあるがこれは作成当時web動画のデファクトスタンダードであったFlashを用いたもので、2021年以降は基本的に視聴出来ない。