アリス・クーパー

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アリス・クーパー
ドイツ・ヴァッケン公演バックステージ(2017年8月)
基本情報
出生名 Vincent Damon Furnier
生誕 (1948-02-04) 1948年2月4日(76歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミシガン州 デトロイト
ジャンル
職業
担当楽器
活動期間 1963年 -
レーベル
公式サイト https://alicecooper.com/

アリス・クーパーAlice Cooper1948年2月4日 - )は、アメリカ合衆国出身のミュージシャンシンガーソングライター俳優

ロック音楽と演劇的ショーの融合を実践し、1970年代前半にはアメリカにおけるグラムロックの代表格だった。その幻想的、創造的なパフォーマンスは「ショック・ロック」とも形容された。代表曲には「ポイズン」(Poison)「スクールズ・アウト」(School’s out)「アリスは大統領」(Elected)「ノー・モア・ミスター・ナイス・ガイ」(No More Mr. Nice Guy)などがある。

かのシュルレアリスム画家、サルバドール・ダリがアリス・クーパーのショウに出演を懇願し、実現したエピソードも有名。2011年には、『ロックの殿堂』入りを果たしている[5]

人物[編集]

若き日の素顔 (1976年)

ミシガン州デトロイト出身、出生名はヴィンセント・デイモン・ファーニア(Vincent Damon Furnier)。アリス・クーパーの名は、若い頃に見た夢に出てきた魔女の名前からとったというエピソードが有名だが、真相は、可愛らしい女の子の名前を付けることで、実際の音楽性とのギャップを狙ったものであると、本人が『プライム・カッツ』のなかで証言している(現在は戸籍上の実名もアリス・クーパーに変えている)。

1970年代初頭にはグラム・ロックのスターだった。「ショック・ロック」を打ち出したことで一部のロッカーに慕われている。1960年代後半にデビュー。「オジー・オズボーン」「エアロスミス」「トーキング・ヘッズ」「ガンズ・アンド・ローゼズ」をはじめ、特にグラムロック、ハードロックのミュージシャンが、アリス・クーパーのファンであることを告白し、アリスのベスト盤特別収録曲ではバッキング・メンバーとして参加している。

来歴[編集]

トレードマークの顔ペイント開始の頃 (1972年)
近年の素顔 (2012年)

1969年、アルバム『プリティーズ・フォー・ユー』でデビュー。なお、デビューから1973年までは「アリス・クーパー」はグループ名でもあった。同年9月13日のen:Toronto Rock and Roll Revivalでのパフォーマンスについて、翌日の全国紙でクーパーがニワトリを噛みちぎり、その血を聴衆に吹きかけたと報道された。しかし、本人の回想では、これは事実と食い違っており、実際はニワトリを聴衆に向かって投げたところ、車椅子の観客に踏み潰されただけであると語っている[6]1971年にはアルバム『エイティーン』を発表。翌1972年に発表したアルバム『スクールズ・アウト』がティーンエイジャーを中心に支持され大ヒットし、一躍人気ロッカーとなった。『スクールズ・アウト』のオリジナル・アナログ盤は、紙製のパンティーに包まれていたことも話題となった。またアルバムのプロモーションのために、実際にアメリカ大統領選挙に出馬している。アリスの回想によれば、「アリスは大統領」を気に入ったジョン・レノンは、三日間続けてアリスのもとへ通ってきたという[7]。当時は、フランク・ザッパとも親交があった(デビューからの3作品は、ザッパの設立したストレート・レーベルからリリースされている)。若い頃からパンダのようなメイクをしており、ダミ声ともいえる唱法で一世を風靡した。「ノー・モア・ミスター・ナイスガイ」もヒットしている。

1974年、映画『007 黄金銃を持つ男』の主題歌候補として「黄金銃を持つ男」(詞も曲も異なる)を歌うが、最終選考でルルに敗れた[8]

アルバム『マッスル・オブ・ラヴ』を最後にバンドとしての「アリス・クーパー」は解散、1980年代初頭には勢いを失うが、1980年代中期から再び脚光を浴び、1989年には豪華ゲストを迎えた『トラッシュ』が大ヒットを記録した。その後も幾度となく浮沈を繰返したが、現在においてもなお精力的に活動を行っており、「キッス」や「エアロスミス」と並ぶ、アメリカン・ハードロック界の重鎮ともいえる存在である。

また、アリスのバンドからは、後に「ウィンガー」を結成するキップ・ウィンガーや、後に「メガデス」等で活躍するアル・ピトレリ等、多くのプレイヤーを輩出した。

米国『TEC Awards』にて俳優仲間と (2017年1月)

俳優としても活躍し、TVシリーズ『名探偵モンク』シーズン5第2話「悪夢のゴミ戦争」に本人役で出演、映画『エルム街の悪夢』シリーズの『ザ・ファイナルナイトメア』にも出演[9]。映画『ダーク・シャドウ』にも本人役で出演した[10]

ハリウッド・ヴァンパイアーズ - ロシア公演 (2018年5月)

近年は、そのジョニー・デップらと意気投合したスーパーグループ・プロジェクト「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」を発足させ、ボーカリストとして名を連ねている[11]

マスメディアはアリスを政治的な保守派だと決めつけるが、2016年の大統領選挙で出馬を検討したり、トム・ハンクスに投票すると語るなど、一筋縄ではいかない人物である[7]。時にその実際の姿が、世間でイメージされているクーパー像との乖離を生じ、パーティー・クラッシャーと誤解されがちな一面も持つ。当人の実像は、パーティーも好む気さくな人物である。

ギャラリー[編集]

アリス・クーパー・バンド[編集]

現ラインナップ
  • アリス・クーパー (Alice Cooper) - ボーカルハーモニカ (1963年- )
  • ライアン・ロキシー (Ryan Roxie) - リードギター (1996年-2006年、2012年- )
  • トミー・ヘンリクセン (Tommy Henriksen) - リズムギター (2011年- )
  • ニタ・ストラウス (Nita Strauss) - リズムギター (2014年- )
  • チャック・ガーリック (Chuck Garric) - ベース (2002年- )
  • グレン・ソーベル (Glen Sobel) - ドラムス (2011年- )

日本公演[編集]

8月18日 大宮ソニックシティ、20日-23日 NHKホール、27日,28日 大阪厚生年金会館、30日 瀬戸市文化センター
3月25日 新木場STUDIO COAST、27日 大阪IMPホール
10月14日「LOUD PARK 17」さいたまスーパーアリーナ

ディスコグラフィ[編集]

スタジオ・アルバム[編集]

  • 『プリティーズ・フォー・ユー』 - Pretties For You (1969年)
  • 『イージー・アクション』 - Easy Action (1970年)
  • 『エイティーン』 - Love It To Death (1971年)
  • キラー』 - Killer (1971年)
  • スクールズ・アウト』 - School's Out (1972年)
  • ビリオン・ダラー・ベイビーズ』 - Billion Dollar Babies (1973年)
  • 『マッスル・オブ・ラヴ』 - Muscle of Love (1973年)
  • 『悪夢へようこそ』 - Welcome To My Nightmare (1975年)
  • 『アリス・クーパー地獄へ行く』 - Goes to Hell (1976年)
  • 『レースとウイスキー』 - Lace & Whiskey (1977年)
  • 『閉ざされた世界』 - From the Inside (1978年)
  • 『フラッシュ・ザ・ファッション』 - Flush The Fasion (1980年)
  • 『スペシャル・フォーセス』 - Special Forces (1981年)
  • 『ジッパー・キャッチズ・スキン』 - Zipper Catches Skin (1982年)
  • 『DADA』 - DaDa (1983年)
  • 『コンストリクター』 - Constrictor (1986年)
  • レイズ・ユア・フィスト・アンド・イェル』 - Raise Your Fist and Yell (1987年)
  • トラッシュ』 - Trash (1989年)
  • ヘイ・ストゥーピッド』 - Hey Stoopid (1991年)
  • 『ザ・ラスト・テンプテーション』 - The Last Temptation (1994年)
  • 『ブルータル・プラネット』 - Brutal Planet (2000年)
  • 『ドラゴンタウン』 - Dragontown (2001年)
  • 『ジ・アイズ・オブ・アリス・クーパー』 - The Eyes of Alice Cooper (2003年)
  • Dirty Diamonds (2005年)
  • He's Back(2006年)
  • Along Came a Spider (2008年)
  • 『悪夢へようこそ 第2章』 - Welcome 2 My Nightmare (2011年)
  • Paranormal (2017年)[12]
  • Detroit Stories (2021年)
  • Road (2023年)

ライブ・アルバム[編集]

  • 『ライヴ!!アリス・クーパー・ショー』 - The Alice Cooper Show (1977年)
  • Live at the Whiskey a Go-Go, 1969 (1992年)
  • 『フィストフル・オブ・アリス』 - A Fistful of Alice (1997年)
ほか

コンピレーション・アルバム[編集]

  • 『アリス・クーパーの人生と罪状の箱』 - The Life & Crimes of Alice Cooper (1999年)
ほか

ビデオ作品[編集]

  • Good to See You Again, Alice Cooper (1974年)
  • Welcome to My Nightmare (1976年)
  • Alice Cooper and Friends (1978年)
  • Alice Cooper: The Nightmare (1983年)
  • The Nightmare Returns (1987年)
  • Video Trash (1989年)
  • Alice Cooper Trashes The World (1990年)
  • Prime Cuts: The Alice Cooper Story (1991年)
  • British Rock Symphony (2000年)
  • Brutally Live (2000年)
  • Live at Montreux 2005 (2006年)
  • Theatre Of Death: Live At Hammersmith 2009 (2010年)
  • The Strange Case of Alice Cooper (2012年)
  • Raise the Dead: Live from Wacken (2013年)

脚注[編集]

  1. ^ Waksman, Steve (2022). Live Music in America: A History from Jenny Lind to Beyonce. Oxford: Oxford University Press. p. 522. ISBN 978-0-197-57053-1 
  2. ^ Sexton, Paul (2021年10月18日). “【特集】グラム・ロックがいかに世界を変えたか:その誕生と退廃”. uDiscovermusic.jp. UNIVERSAL MUSIC JAPAN. 2023年4月3日閲覧。
  3. ^ a b c Erlewine, Stephen Thomas. “Alice Cooper Biography, Songs, & Albums”. AllMusic. RhythmOne. 2023年4月3日閲覧。
  4. ^ CDジャーナル編集部『ロック&ポップス名曲徹底ガイド(3) 1970-74年編 名曲240決定盤CD816』音楽出版社、東京都千代田区、2006年、138頁。ISBN 978-4-861-71018-6 
  5. ^ アリス・クーパー、トム・ウェイツ、ロックの殿堂入り - BARKS
  6. ^ Hear How Alice Cooper’s Infamous Chicken Incident Really Happened
  7. ^ a b アリス・クーパーが分析する"奇妙な"米大統領選:「俺はトム・ハンクスに投票する」 - Rolling Stone
  8. ^ BBCを英語で読む「ボンド映画の主題歌になれなかった名曲たち」(3)
  9. ^ 天は二物を与えすぎ!! ジョニー・デップの超絶ギター - Aol.
  10. ^ ジョニデとアリス・クーパーが白塗りメイクでご対面!サプライズ演出いっぱいのバートン監督最新作! - シネマトゥデイ
  11. ^ ハリウッド・ヴァンパイアーズ、ジョニー・デップ映像を公開”. BARKS (2015年9月11日). 2018年9月4日閲覧。
  12. ^ アリス・クーパー、新作にZZトップのギボンズとU2のラリーが参加 - BARKS

関連項目[編集]

外部リンク[編集]