アリの巣

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アリの巣の石膏模型
アリ塚とアリの通り道(オーストラリアのオックスリー・ワイルド・リバーズ国立公園

アリの巣(アリのす、: ant colony)は、アリが作り住むである。

概要[編集]

アリは地下に穴を掘って部屋を作り、それを巣とするものが多い。ただし、植物の中の空洞部やちょっとした物陰を巣とするもの、あるいは巣を作らないものもあり、すべてのアリがこのような巣を作るものではない。ここでは地下に巣を作るものについて述べる。

アリの巣は地中にいくつもの部屋があり、それらが互いにトンネルで繋がっていて、地表には小さな出入り口がある。部屋には育児室、食料貯蔵室、繁殖室などがある。巣の建設は働きアリの一群が土の粒を口で少しずつ運ぶことでなされ、出口付近にその土が堆積することで盛り上がったアリ塚 (ant-hill) を形成することもある。働きアリは巣の周辺で食料を探し、巣に運び込む。また、同位体を使った研究で巣から巣へ食料を運んでいることも判明している[1]

他のハチ目の昆虫が社会性を示すようにアリも真社会性だが、これらの種は独自に社会性を身につけたと考えられており、平行進化の例とされている。は1匹の女王アリが産む(女王アリは複数いることもある)。女王アリは体が他のアリに比べて大きく、特に部と胸部が大きい。女王アリは卵を産んで子孫を増やすのが役割である。女王アリが産んだ卵の多くは、翅のない不妊の雌アリである「働きアリ」に成長する。多くの種で周期的に新たな女王アリと雄アリ(翅がある)が生まれ、繁殖を行う。雄アリは短命だが、生き延びた女王アリは新たな巣を作るか、時には古い巣を再利用する。女王アリの寿命は長いもので約21年と言われている。

人間は研究目的や趣味としてアリを捉え、アリの巣を作らせて観察する。このためのアリの飼育器を英語ではフォーミカリアムあるいはアントファーム(ant farm、アリ農場)と呼ぶ。通常、アリの巣の形状が見やすくなるよう薄い形状になっている。

融合コロニー性とスーパーコロニー[編集]

多くの場合、別々の巣から来たアリ同士は敵対的である。しかしアリによっては融合コロニー性 (unicoloniality) と呼ばれる性質があり、別の巣の働きアリ同士が相互に行き来する。敵対しない複数の巣の集まりをスーパーコロニー (supercolony) と呼び、同じ種のアリであっても別々のスーパーコロニーの個体同士は敵対的な行動を示す。1つのスーパーコロニーの縄張りは必ずしも連続した領域とは限らない[2]

2000年まで、日本北海道石狩市の石狩浜にあるスーパーコロニーが世界最大とされていた[3]。そのスーパーコロニーは、約2.7km2の領域に地下通路で相互に連結された45,000の巣があり、3億600万の働きアリと100万の女王アリが生息していると見積もられていた[4]。2000年、南ヨーロッパアルゼンチンアリのスーパーコロニーが多数発見された(研究が公表されたのは2002年)。地中海から大西洋にかけての6,004kmの海岸線の33カ所のアリの集団を調査したところ、30カ所は数百万の巣と数十億の働きアリで1つのスーパーコロニーを形成しており、残る3カ所は別のスーパーコロニーを形成して点在していた[2]。この研究者らは、外来のアリであったためにボトルネック効果で遺伝的多様性が失われたためというだけでは、この規模の融合コロニー性を説明できないと主張している。2009年、日本、中国、カリフォルニアヨーロッパアルゼンチンアリのスーパーコロニーが、実際には1つの「メガコロニー (megacolony)」に属している証拠が示された[5]

2004年には、オーストラリアメルボルン近郊で約100kmに渡るスーパーコロニーが発見されている[6]

アリ塚[編集]

粘土製のアリ塚

アリの作るアリ塚(ant-hill) は、単純なもので、土や松葉粘土など(あるいはそれらの混合物)の堆積でできた山であり、アリが巣を地中に作る過程で入り口付近に捨てたものである。働きアリの群れはアリの巣を作るとき、植物や土を細かく砕いてアゴで運び、巣の出口付近に捨てる。一般にこのとき働きアリは、土や植物が巣に転がり戻ることがないよう、堆積の頂上まで登ってから捨てる。しかし、一部の種はそれらのゴミを材料として塚 (mound) を形成し、その中にも部屋を作る。日本語ではこれを蟻垤(ぎてつ)あるいは蟻封(ぎほう)などとも呼ぶ。

なお、熱帯域ではアリ塚ant-hill と言った場合にシロアリ (termite) の塚を意味する。シロアリの作るアリ塚は、遙かに複雑で恒久的な構造である。

脚注・出典[編集]

  1. ^ Blüthgen, Nico; Gerhard Gebauer, Konrad Fiedler (2003-11-01). “Disentangling a rainforest food web using stable isotopes: dietary diversity in a species-rich ant community”. Oecologia 137 (3): 426-435. doi:10.1007/s00442-003-1347-8. http://dx.doi.org/10.1007/s00442-003-1347-8 2009年5月19日閲覧。. 
  2. ^ a b Tatiana Giraud, Jes S. Pedersen, and Laurent Kelle. Evolution of supercolonies: The Argentine ants of southern Europe. The National Academy of Sciences, 2002.
  3. ^ "企画講座「エゾアカヤマアリの生態を学ぶ」より"、はまぼうふう vol.16(石狩浜海浜植物保護センター通信)、p.3、2005年8月26日
  4. ^ Higashi, S. and K. Yamauchi. Influence of a Supercolonial Ant Formica (Formica) yessensis Forel on the Distribution of Other Ants in Ishikari Coast. Japanese Journal of Ecology, No. 29, 257-264, 1997.
  5. ^ Ant mega-colony takes over world BBC Wednesday, 1 July 2009 10:41 GMT
  6. ^ Super ant colony hits Australia. BBC News, 2004.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]