アラスカ級大型巡洋艦

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アラスカ級大型巡洋艦
USS Alaska CB-1.jpg
1944年に撮られた「アラスカ(CB-1)」
艦級概観
艦種: 大型巡洋艦
艦名: 準州、海外領名 一番艦はアラスカ準州に因む
性能諸元
排水量 基準:28,880トン
満載:34,300トン
全長 246.4m
水線長 241.25m
全幅 27.7m
吃水 9.2m~9.72m
機関 バブコック・アンド・ウィルコックス重油専焼水管缶8基
ゼネラル・エレクトリック社製2段減速式ギヤード・タービン4基4軸推進
最大出力 150,000hp
最大速力 33.0ノット
航続距離 15ノット/12,000海里(計画時)
燃料 重油:3,710トン
乗員 1,800名
武装 30.5cm(50口径)3連装砲3基
12.7cm(38口径)連装両用砲6基
ボフォース 4cm(56口径)4連装機関砲18基
エリコン 2cm(70口径)機銃34門
防御 舷側:229mm(主装甲部、10度傾斜)
127mm(水線面下部)
甲板:71~76mm(主甲板)
25mm(断片防御甲板)
主砲塔:325mm(前盾)
133~152mm(側盾)
127mm(天蓋)
両用砲:25mm(前盾)
19mm(側盾)
19mm(後盾)
19mm(天蓋)
バーベット部:279~330mm
司令塔:269mm(側盾)
127mm(天蓋)
航空兵装 水上機4機OS2U/SC[1]カタパルト2機)

アラスカ級大型巡洋艦Alaska Class Large Cruiser)は、アメリカ海軍大型巡洋艦。文献によっては主砲口径や排水量からしばしば巡洋戦艦に分類される。

概要[編集]

本級は、アメリカ海軍が、日本が秘かに開発していると伝えられていた「秩父型大型巡洋艦[2]」やドイツの「ドイッチュラント級装甲艦」 、「シャルンホルスト級巡洋戦艦」などに対抗するため、重巡洋艦よりも大型で条約型巡洋艦を火力で凌駕し、戦艦よりも安価に調達の出来る「ラージ・クルーザー」として建造を計画したものである。

艦形[編集]

USS Alaska CB-1

美しさよりも生産性・実用性を重視するアメリカらしく、すっきりとしたデザインにまとめられている(デザイン元は同時期に建造された「ノースカロライナ級」であると言われる)。船体は平甲板型船体で、艦首から伸び上がったシア(艦首の反り返り)が際立つ艦首甲板上に、新設計の「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」を三連装砲塔に収めて1・2番主砲塔を背負い式に2基搭載した。

「アラスカ」の艦橋の写真。本級の艦橋は必要に対してスペース不足だった。また、船体中央部の高所にカタパルトを配置したために両用砲の射撃範囲を規制してしまった。

その背後から甲板一段分上がって2番主砲塔の後部に「1934年型 12.7cm(38口径)両用砲」を防盾の付いた連装砲架で1基、更に一段甲板が上がって司令塔を組み込んだ箱型の操舵艦橋が立ち、その側面には2番・3番両用砲を1基ずつ配置、二段式の見張り台を備える戦闘艦橋の頂部には 7.2m測距儀を配置した。船体中央部には直立した1本煙突が立ち、従来の戦艦・条約型巡洋艦にはあった後部マストが省略されため、アンテナ線の展開のために煙突後部にT字型のアンテナが付くものの、フランスの「リシュリュー級」に採用されたようなMACK型煙突後檣の役割は持たなかった。

舷側甲板上は艦載機を運用するスペースが設けられ、舷側中央部に短いカタパルトが片舷に1基ずつ計2基装備された。艦載機は煙突下部の格納庫からクレーンによりカタパルトに載せられた。カタパルトの後方に3~6番両用砲を逆三角形型に3基配置したところで上部構造物は終了し、その背後の後部甲板上に3番主砲塔が後向きに1基配置された。

船体[編集]

本級の細長さが良くわかる写真。

本級の船体設計は当初は戦艦と同レベルに検討されていたが、対12インチ防御を持つ戦艦設計で設計した場合は排水量・建造費が同世代の新戦艦と変わらなくなってしまい、建造費用を抑えるために途中で巡洋艦式の設計に改められた。

このため、船体は建造しやすい平甲板型船体となっており、艦首は凌波性を高くするために高くされて側面にフレア(波を下方に落とすための窪み)を持つクリッパー型艦首となっている。また、本級の船体サイズは縦横比率が8:1と、異常に細長い。そのために荒天時の操舵性・凌波性は同クラスの軍艦の中で最も悪く、直進安定性が良すぎて舵の効きがタンカー並に悪く、在籍時は艦隊行動を乱す問題児であった。これは元々の設計が巡洋艦式で高速を出し易い船体形状であるためと、舵の配置方式は新戦艦に採用されたツイン・スケグ(スクリュー軸に板状の構造物を付け、スクリューの背後に舵を配置する形式)ではなく、巡洋艦と同じく艦尾に一枚を付ける形式を採用しているためでもあるので、純粋に砲撃時の安定性も考慮される戦艦と比べるべきではないかもしれない。

武装[編集]

主砲[編集]

艦首から撮られた「グアム」。

本級の主砲には「ワイオミング級」の「1912年式 Mark7型 30.5cm(50口径)砲」を改良した「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」を採用した。本級の主砲は12インチ砲ながら14インチ砲弾並の重量級の砲弾(SHS:517kg)が発射可能で、最大仰角45度で射程35,271mまで届かせる能力を持っていた。破壊力は射距離22,800m以内で舷側装甲267mmを貫通し、射距離32,000m以上では甲板への貫通値は182mmで、なかなかの高性能砲といえる。これを新設計の3連装砲塔に収めた。発射速度は毎分2.4発~3発である。俯仰は仰角45度/俯角3度が可能であり、動力は電動、補助に人力を必要とした。旋回角度は首尾線を0度として左右150度であった。

副砲、その他の備砲[編集]

副砲の代わりにノースカロライナ級にも装備された「1934年型12.7cm(38口径)両用砲」を採用し、これを連装砲架で6基装備した。配置方式は戦艦のように片舷に半分ずつ搭載する方式でなく、重巡洋艦ボルティモア級」のように亀甲型に配置した。この配置は少ない搭載数でも前後方向に6門、左右方向に8門が指向できる効率の良い搭載方式である。その他に両用砲の補助として「40mm(56口径)ボフォース機関砲」を4連装で14基56門、「エリコン20mm(70口径)機関銃」を34門装備した。

防御[編集]

本級の船体防御は、戦艦の装甲配置における主甲板防御から弾片防御を取り払った様な形式を採用しており、ここでも巡洋艦式設計の影響がある。舷側装甲は229mmの装甲を10度の傾斜を付けて装備する傾斜装甲形式で、新戦艦と同様である。これを1番主砲塔側面から3番主砲塔側面にかけ、広範囲に防御しており、水面から下部は127mmまでにテーパーしている。また、水平防御は上甲板に71mmから76mmの装甲が貼られ、その下に25mm装甲が貼られた。そのため、合計しても水平防御は96mm~101mmにしかならず、同クラスの排水量を持つ軍艦と比較しても本級の防御力は低い。対重巡洋艦戦闘ならば本級の防御は重防御だが、仮想敵の「超甲巡」の12インチ砲や「シャルンホルスト級」の11インチ砲に対しては本級の防御は不充分であり、更に日本海軍の「金剛型」の持つ14インチ砲に対し本級の防御能力は明らかに低い。また、対水雷防御が適用されている範囲は主舷側装甲の張られている範囲と同一で、そこから先は船体下部の二重底が舷側まで伸びて一層式の水密区画となっている他は区画細分化で妥協しており、ここでもコストダウンが響いている。上述の通り本級がしばしば巡洋戦艦に分類されるのは、この防御力の弱さによるものである。

機関[編集]

本級の機関はコストダウンのため、航空母艦エセックス級」と同一で、バブコック&ウィルコックス式重油専焼缶8基とジェネラルエレクトリック社製2段減速式ギヤード・タービン4基4軸推進を採用し、最大出力150,000hpで最大速力33ノットを発揮できるとされていたが、公試ではカタログデーターを下回った。機関配置は新戦艦と同様に「シフト配置」を採用しているが、ここでも機関配置は巡洋艦式で、ボイラー4基とタービン2基を1組として前後2組を配置していた。

同型艦[編集]

  • アラスカ(USS Alaska, CB-1)
  • グアム(USS Guam, CB-2)
  • ハワイ(USS Hawaii, CB-3) 未成艦、進水後の1947年2月に建造中止。

以下は計画艦

  • フィリピンズ(USS Philippines, CB-4)
  • プエルトリコ(USS Puerto Rico, CB-5)
  • サモア(USS Samoa, CB-6)

[編集]

  1. ^ Swanborough and Bowers, 148.
  2. ^ 基準排水量15000t、速力30ノット、30.5cm砲6門搭載とされるが、現実にはそのような艦の計画すら存在しなかった。日本海軍がB65型大型巡洋艦の建造を計画したのは後年の事であり、むしろアラスカ級の情報がきっかけとなった物であり、スペックも異なる。

関連項目[編集]

参考図書[編集]

外部リンク[編集]