アナベル・リー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

アナベル・リー』(Annabel Lee )は、1849年に書かれたアメリカの作家・詩人・編集者・文芸批評家エドガー・アラン・ポーによる最後の詩である。ポーの死後2日目に地元新聞「ニューヨーク・デイリー・トリビューン」紙に発表された。

日本語訳詩は日夏耿之介阿部保などある。大江健三郎は日夏訳[1]から初めての女性を中心にした小説『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』(「らふたし〜」/読み方は「ろうたし〜」)という作品を書いている[2]。作家の宮本百合子は『獄中への手紙』で宮本顕治に日夏訳を紹介している。

原文[編集]

IT was many and many a year ago,
In a kingdom by the sea,
That a maiden there lived whom you may know
By the name of ANNABEL LEE;
And this maiden she lived with no other thought
Than to love and be loved by me.
I was a child and she was a child .
In this kingdom by the sea:
But we loved with a love that was more than love --
I and my ANNABEL LEE;
With a love that the winged seraphs of heaven
Coveted her and me.
And this was the reason that, long ago,
In this kingdom by the sea,
A wind blew out of a cloud,chilling
My beautiful ANNABEL LEE;
So that her high-born kinsman came
And bore her away from me,
To shut her up in a sepulchre
In this kingdom by the sea.
The angels, not half so happy in heaven,
Went envying her and me -
Yes! - that was the reason (as all men know,
In this kingdom by the sea)
That the wind came out of the cloud by night,
Chilling and killing my Annabel Lee.
But our love it was stronger by far than the love
Of those who were older than we—
Of many far wiser than we—
And neither the angels in Heaven above
Nor the demons down under the sea,
Can ever dissever my soul from the soul
Of the beautiful Annabel Lee
For the moon never beams, without bringing me dreams
Of the beautiful Annabel Lee;
And the stars never rise, but I feel the bright eyes
Of the beautiful Annabel Lee
And so, all the night-tide, I lie down by the side
Of my darling - my darling, - my life and my bride,
In the sepulchre there by the sea,
In her tomb by the side of the sea

[編集]

昔々のお話です
海のほとりの王国に
一人の娘が住んでいた
その子の名前はアナベル・リー
いつも心に思うのは
僕への愛と僕の愛
僕もあの子もふたり子供
海のほとりの王国で
愛し愛して愛以上
僕と僕のアナベル・リー
翼あるあの天使さえ
僕らの愛をうらやんだ
そしたら昔のお話です
海のほとりの王国で
雲が木枯し吹きつけた
僕のかわいいアナベル・リー
そしたらえらい親戚が
あの子をたちまち連れてって
お墓にぴしゃり閉じ込めた
海のほとりの王国で
お空の天使はさびしくて
僕とあの子をねたんでた
そう! すべてはそのせいで(ご存じ
海のほとりの王国で)
雲から木枯し夜通し吹いて
凍えて死んだアナベル・リー
だけどふたりのその愛は
年寄り物知りみんなより
ずっとずうっと強かった
だからお空の天使でも
海の底の魔物でも
僕とあの子のたましいを
引き離せないアナベル・リー
月輝かず、汝が夢は来たらず
かの美しきアナベル・リー。
星出でず、されど見る汝が輝かしき瞳
かの美しきアナベル・リー。
さればこの夜の季節、われかたわらに身を横たう
わが愛する、愛する、わが生命、わが花嫁よ。
あの海のほとりの墓所にて、
海鳴るほとりの霊屋にて。

脚注[編集]

  1. ^ 日夏訳の文体を選んだ理由を若島正訳、ウラジーミル・ナボコフロリータ』(新潮文庫)の解説で「それは母国の現代語には無知で、家庭の事情から「唐詩選」はじめ漢詩になじんでいたからだ。それを手引にアメリカ文化センターの豪華本で見つけたポーの原詩は、私にいささかも古びたところのない、新しい英語とひとしいものに感じられた。その英詩と日夏訳との間の文体、声の落差がさらにも強く私を魅了したのである。それをきっかけに、これら二つの(時には三つの)言語の間を行き来することであじわいなれた恍惚が、いまも私の文学受容になごりをとどめている」と書いている。
  2. ^ 渡辺利雄『アメリカ文学に触発された日本の小説』(研究社2014年)pp.27-53。