アダ級コルベット

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アダ級コルベット
基本情報
艦種 コルベット
運用者  トルコ海軍
就役期間 2011年 - 現在
前級 B級 (旧仏デスティエンヌ・ドルヴ級)
次級 (最新)
要目
満載排水量 2,300トン[1]
全長 99.5 m[1]
最大幅 14.4 m[1]
吃水 3.9 m[1]
機関方式 CODAG方式[2]
主機MTU 16V595 TE90
 ディーゼルエンジン×2基[3]
LM2500ガスタービンエンジン×1基[3]
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 54,160馬力
速力 31ノット[4]
航続距離 3,500海里(15ノット巡航時)[5]
乗員 85人(士官14人)[1]
兵装76mm スーパーラピッド砲×1門
・ASELSAN 12.7mmRWS×2挺
RAM近SAM 21連装発射機×1基
ハープーンSSM×8発
Mk.32 連装魚雷発射管×2基
搭載機 S-70-B2ヘリコプター×1機[2]
C4ISTAR GENESIS戦術情報処理装置
FCS STING-EO Mk.2
レーダー SMART-S Mk.2 3次元式×1基
光学機器 ASELFLIR-300D FLIR
ソナー ヤカモズ 船底装備式
電子戦
対抗手段
・ARES-2N電波探知装置
・カルカン デコイ発射機
・SSTD対魚雷デコイ装置
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アダ級コルベットトルコ語: Ada sınıfı korvet英語: Ada-class corvette)は、トルコ海軍コルベットの艦級。計画名はミルゲムトルコ語: MİLGEM projesi[6][4]

設計[編集]

本級は、トルコ初の国産大型水上戦闘艦であり、ミルゲム計画として1996年より着手された[6]。沿海域での対水上・対潜戦を主眼においており、ロッキード・マーティン社のフリーダム級沿海域戦闘艦に似たステルス艦として設計されている[7]。船型は長船首楼型を採用した。耐航性に優れ、シーステート5でもすべての任務を実施でき、部分的にはシーステート6にも対応できる[8]

主機関はCODAG方式とされており、巡航機としてV型16気筒MTU 16V595 TE90ディーゼルエンジン2基(単機出力11,580馬力)、加速機としてゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン1基(単機出力31,000馬力)を備えている。ディーゼルエンジン1基のみでも15ノットでの巡航が可能である[4]

装備[編集]

戦闘システムの中核として、国内開発のGENESIS戦術情報処理装置Gemi Entegre Savas Idare Sistemi)を搭載する。これはG級フリゲートの近代化改修で既に採用されていたものであった。また本級専用の派生型としてG-MSYS(GENESYS MILGEM Savas Yonetim Sistemi)も開発されている。ネームシップの就役当初はリンク 11にしか対応していなかったが、まもなくリンク 16にも対応できるようコンソールが追加された。リンク 22への対応も予定されている[8]

主センサーとなるのが、Sバンド3次元レーダーであるSMART-S Mk.2である。これはMEKO型フリゲートG級フリゲートへの後日装備も予定されており、2010年にはトルコ国内でのライセンス生産契約が締結されていた。なお航海用レーダーは低被探知性(LPI)を備えている。ソナーとしては、アメリカ製のAN/SQS-56を元に開発されたヤカモズを搭載する。なおAN/SQS-56はMEKO型フリゲートG級フリゲートなどで、既にトルコ海軍では広く採用されていた[8]

同型艦一覧[編集]

# 艦名 建造所 起工 進水 就役
F-511 ヘイベリアダ
TCG Heybeliada
イスタンブール
海軍工廠
2007年
1月22日
2008年
9月27日
2011年
9月27日
F-512 ブユックアダ
TCG Büyükada
2008年
9月27日
2011年
9月27日
2013年
9月27日
F-513 ブルガズアダ
TCG Burgazada
2013年
9月27日
2016年
6月18日
2018年
11月4日
F-514 クナルアダ
TCG Kınalıada
2016年
6月18日
2017年
7月3日
2019年
9月29日

更に4隻が計画されていた[7]が、これらは拡大発展型のイスタンブール級(I級)フリゲートとして建造される。イスタンブール級1番艦は2017年に起工され、2021年1月に進水した[9]

派生型[編集]

派生型として、情報収集艦「ウフク(TCG Ufuk)」が2022年1月14日に就役した。兵装とヘリコプター格納庫を撤去し、機関をディーゼルのみ搭載、全部マストを大形化し艦体後部にマストを増設している。エリントシギントを行うほか、試験艦練習艦の任務も兼任する[10]

各国への輸出[編集]

2011年にはインドネシア海軍向けとして2隻の建造契約が締結された[11]と報じられたが、これは後にキャンセルされオランダのシグマ級コルベットのライセンス生産に切り替えられた。

2018年にパキスタン海軍向けにジンナー級フリゲートとして4隻の建造契約が結ばれた[12]。ジンナー級ではパキスタン軍が装備する中国製HQ-16艦対空ミサイルに対応したVLSシステムおよびトルコ国産のCIWSシステムが追加搭載され、排水量が増大する見込みであると報じられている[13]。また2020年には、ウクライナ海軍向けにムィコラーイウのオケアン造船所でのライセンス生産契約が締結されたと発表された[14]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e MİLGEM Sınıfı Korvetler”. トルコ海軍. 2013年2月6日閲覧。
  2. ^ a b Milgem Class, Turkey”. naval-technology.com. 2013年2月6日閲覧。
  3. ^ a b ADA Class Corvette”. Delta Marine. 2013年2月6日閲覧。
  4. ^ a b c Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 751. ISBN 978-1591149545 
  5. ^ MILGEM”. GlobalSecurity.org. 2013年2月6日閲覧。
  6. ^ a b Stephen Saunders, ed (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. p. 833. ISBN 978-0710628886 
  7. ^ a b 「写真特集 世界の新鋭水上戦闘艦」『世界の艦船』第832号、海人社、2016年3月、21-46頁、NAID 40020720284 
  8. ^ a b c Devrim Yaylali「SIGNIFICANT SHIPS - MIRGEM CLASS CORMETTES」『Seaforth World Naval Review 2016』Casemate Publishers、2015年、125-140頁。ISBN 978-1848323117https://books.google.co.jp/books?id=1RUDDAAAQBAJ 
  9. ^ トルコ海軍FFイスタンブール級の1番艦が進水”. 海人社 (2021年2月26日). 2021年3月28日閲覧。
  10. ^ 写真:C.TULÇA「トルコ海軍の新型情報収集艦「ウフク」」 『世界の艦船』第981集(2022年10月特大号) 海人社 P.84
  11. ^ (トルコ語) Endonezya liderinden 300 milyar dolarlik davet, Zaman, 6 April 2011
  12. ^ Turkish Firm Wins Tender to Build Four Corvettes for Pakistan Navy”. www.defenseworld.net. 2021年3月27日閲覧。
  13. ^ Turkish-built corvettes to assist Pakistan’s littoral defense, safeguard new commercial frontiers” (英語). Daily Sabah (2020年6月25日). 2021年3月27日閲覧。
  14. ^ AA, DAILY SABAH WITH (2020年12月22日). “Turkey-made Ukrainian navy corvettes to be built in Okean shipyard” (英語). Daily Sabah. 2021年3月27日閲覧。