アグニVミサイル

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アグニV (Agni-V)
種類 大陸間弾道ミサイル[1][2]
原開発国 インド
運用史
配備期間 2014(予想)[3] (開発中) [4]
配備先 インド陸軍
開発史
製造業者 Defence Research and Development Organisation (DRDO),
Bharat Dynamics Limited (BDL)
値段 2.5-3.5億ルピー または 5600-7900万米ドル[5]
諸元
重量 50,000 kg[6]
全長 17.5 m [7]
弾体直径 2 m

弾頭 核弾頭 (MIRV:予定)
炸薬量 1.1 トン[10]

エンジン 固体燃料ロケット3段式
行動距離 5,500キロメートル (3,400 mi)[1][8]以上
最大射程 6,000キロメートル (3,700 mi)[8]
発射
プラットフォーム
8 x 8 Tatra TEL(運搬・発射車両)および鉄道移動式発射台 (キャニスター収納式ミサイルパッケージ) [9]
輸送機体 道路運搬

アグニVミサイル (アグニファイブミサイル、: Agni-V)は、インドの防衛研究開発機関 (Defence Research and Development Organisation; DRDO)で開発が進められている大陸間弾道ミサイルである。これは、インドの統合誘導ミサイル開発計画英語版 (Integrated Guided Missile Development Programme) のもとに進められているアグニシリーズミサイル開発計画の一部を成すものである。

アグニVは、2012年4月19日にインド東部のオリッサ州沿岸にあるWheeler島英語版 において打上げ試験が実施され、成功したと発表された[11]。DRDO の V.K. Saraswat 長官は、アグニVの正確な射程は機密事項とされていると述べていたが[12]、打上げ試験直後に射程は5,500-5,800 km であると述べている[13]

概要[編集]

インドの上級防衛科学者の一人である M Natrajan 博士は、2007年に、防衛研究開発機関 (Defence Research and Development Organisation; DRDO) はアグニVとして知られる アグニIIIの改良型 (以前はアグニIII* (アグニ・スリー・スター)またはアグニⅣとして知られていた)の開発にかかっており、4年以内に完成する。このミサイルは約6000km におよぶ射程を持つ予定である、と公表した [14]。2010年9月に DRDO の V.K. Saraswat 長官は、最初の試験発射は 2011年の第四四半期に実施される予定であると発表した[15]

インド軍は、2段式で射程が約3500km のアグニIIIの開発が完了し、昨年導入前試験が完了したことから、すでにその導入を開始している。これはまた、アグニI (射程 700km) とアグニII (射程 2000km 以上)の運用開始を早める結果となっている。

さらにまたアグニVを導入しようとする理由の一つは、アグニV が他の他のアグニシリーズのミサイルとは異なるキャニスター発射型であり、保管が容易で、さらに全高 17.5メートルもあるミサイルを容易に道路運送可能であることがある。もう一つの理由は、アグニV は現在並行して開発中の MIRV(多弾頭個別照準可能再突入体)ペイロードを運搬可能となる予定であるからである。

打上げ質量約50トン、開発費用250億ルピー以上のアグニVには、リング・レーザー・ジャイロスコープや加速度センサーのような先進技術が組み込まれる予定である。その第1段はアグニIIIのものを継承しており、第2段はアグニIIIのものを改造したものを用いている。第3段は 5000kmの飛行を確実にするため、アグニIIIより小型化されたものとなっている。

DRDO はさらに、2層防衛式の BMD (弾道ミサイル防衛) システムの試験を加速している。このシステムは敵の弾道ミサイルを大気圏の内側と外側の両方で追尾し破壊するように設計されている。PDV と呼ばれる新型の迎撃ミサイルが既存の機種に追加される予定である。 [16]

打上げ試験までの過程[編集]

2011年1月に、A.K. Antony 防衛大臣は DRDO の年間表彰式典の演説の中で、防衛科学者たちに射程 5000km のミサイルの威力を早急に示してもらいたいと要請した[7]。 これに答える形で DRDO の Saraswat 長官は、「われわれはアグニV の3段(固体ロケットモーター)の個別試験を終了し、全ての地上試験は今や終了している。Wheeler島からの打上げ試験は2012年に実施されることになるであろう」と 2011年11月に Times of India 紙に語っている[1]

2012年2月に、ある情報筋は、 DRDO はほとんどの準備を完了しているのであるが、ミサイルはインド洋のほぼ半分を飛行するため、スケジュールおよびロジスティック上の問題が発生していると明かした。インドネシアやオーストラリアなどの国々、試験ゾーンにかかる国際航空路線および船舶に対して7から10日前までに事前警告を行う必要があった。さらに、DRDOの科学者とトラッキングシステムを乗せたインド海軍の軍艦を、飛行経路の中間点および南インド洋に設置された標的の近くに配置する必要があった[17]

最初の打上げ試験[編集]

アグニVは、2012年4月19日にインド東部のオリッサ州沿岸にあるWheeler島において打上げ試験が実施され、成功したと発表された[18] 。 試射は統合試射場(Integrated Test Range : ITR) 第4発射複合施設から、鉄道移動式発射台を用いて行われた[19]。 打上げから約20分後、高度100㎞で第3段ロケットが再突入体を大気圏内に再突入させ、その後再突入体は、5000km以上離れたインド洋上に前もって設定されていた標的に命中した[20]。 試射場の指揮官である S.P. Das は BBC に、結果は全てテストパラメーター(規準)を満すものであったと述べている[21]。報道によれば、アグニVは標的をわずか数メートルの誤差という高精度でヒットした模様である[22]。 中国の専門家は、実際にはこのミサイルは8000 km 離れた目標に到達できる潜在的能力を持っているのであるが、インド政府は他国の懸念を惹起することを避けるために、意図的にミサイルの能力を過小に公表しているのではないかと感じている[23][24]

性能と特徴[編集]

ミサイルの射程

アグニVは3段式固体燃料ミサイルであり、第3段のモーターケーシングは複合材料製である[25]。今後、ミサイルの3段の内の2段までが複合材料製となる予定である[26]。アグニVは多弾頭を運搬可能となる予定であり、また迎撃ミサイルシステム ( Anti-ballistic missile systems)への対抗手段も搭載する予定である[27]

このミサイルはキャニスター(円筒形コンテナー)を使用し、この中から発射されることになる。この新ミサイルの 60% はアグニIIIとほぼ同様の構造であるが、リング・レーザー・ジャイロスコープや加速度センサーのような先進技術が新規に組み込まれる予定である[28]

ALS (Advanced System Laboratory) のディレクターの Avinash Chander は「アグニVは道路運搬のために特別な工夫がなされている。キャニスターの開発がうまくいったので、今後インドの全ての地上設置戦略ミサイルはキャニスター収納型になるであろう。」と説明している[29]

キャニスターはマルエージング鋼製で、ミサイルを数年間に渡り保管するために、内部を気密状態に保つようになっている。発射時において、重量50トンのミサイルを射出する際には、300トンから400トンの推力が発生するが、キャニスターはこれによる膨大な応力を吸収できる必要がある。

ペイロードを減らせば、アグニVの射程をさらに長くすることは可能である。」と、Saraswat は2010年2月にロイター通信に語っている[30]

アグニVをさらに増強する技術的ブレークスルーは、ASLが MIRV(多弾頭個別照準可能再突入体)の開発と試験に成功することである。アグニVの上段に搭載される MIRV は3から10個の個別の核弾頭から成る。各核弾頭は、各々数百から数千キロ離れた別々の目標に照準可能である。反対に、一つの目標に2個以上の弾頭を割り当てることも可能である[29]

アグニV SLBM[編集]

DRDO は潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM)バージョンのアグニVミサイルの開発に取り掛かっており、このミサイルはインドに高信頼性の海中ベースの第2撃能力を与えるであろう。この SLBM はアグニVの縮小版であり、" K-V+ /XV " とも呼ばれている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c “Eyeing China, India to enter ICBM club in 3 months”. The Times of India. (2011年11月17日). http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2011-11-17/india/30409335_1_agni-v-agni-iv-agni-programme-director 
  2. ^ “With Russian help, India to enter ICBM club soon”. Dailypioneer. (2011年10月8日). http://www.dailypioneer.com/columnists/item/47621-with-russian-help-india-to-join-icbm-big-league-soon.html 
  3. ^ “DRDO Lab Develops Detonator for Nuclear Capable Agni-V Missile As It Gets Ready For Launch”. Defencenow. (2012年1月17日). http://www.defencenow.com/news/474/drdo-lab-develops-detonator-for-nuclear-capable-agni-v-missile-as-it-gets-ready-for-launch.html 
  4. ^ “Agni V test depends on prime success”. IBNLive. http://ibnlive.in.com/news/agni-v-test-depends--on-prime-success/194412-60-117.html 2011年11月11日閲覧。 
  5. ^ Technical tune to Agni test before talks”. The Telegraph. 2007年12月13日閲覧。
  6. ^ Preparations apace for Agni V launch
  7. ^ a b “DRDO plans to test 10 missiles this year”. The Times of India. (2011年1月27日). http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2011-01-27/bhubaneswar/28376198_1_agni-ii-km-range-agni-iii 2011年10月19日閲覧。 
  8. ^ a b “Agni-4/5”. Missile Threat. (2010年7月19日). http://www.missilethreat.com/missilesoftheworld/id.189/missile_detail.asp 
  9. ^ Y. Mallikarjun, Agni-V design completed; to be test-fired in 2010, The Hindu, 27 November 2008
  10. ^ The Hindu, "Agni-V lifts off, making India a major missile power", April 19, 2012
  11. ^ [1]
  12. ^ DHNS (2012年4月21日). “Agni V can launch mini-satellites too”. Deccan Herald (New Delhi). http://www.deccanherald.com/content/243544/agni-v-can-launch-mini.html 2012年4月21日閲覧。 
  13. ^ “Missile defence system ready for induction: DRDO chief”. IndianExpress news service. (2012年4月28日). http://www.indianexpress.com/news/missile-defence-system-ready-for-induction-drdo-chief/942650/ 2012年5月1日閲覧。 
  14. ^ Press Trust of India. “Next variant of Agni to be inducted within 4 years: Scientist”. 2007年9月26日閲覧。
  15. ^ Agni-V To Be Test Fired in 2011: DRDO
  16. ^ [2]
  17. ^ Rajat, Pandit (2012年2月24日). “Decks cleared for first test of 5000-km range Agni-V missile”. Times of India. http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2012-02-24/india/31095102_1_agni-v-canister-launch-dong-feng-31a 2012年3月10日閲覧。 
  18. ^ Agni-V, India's first ICBM, successfully test-fired. NDTV (2012-04-19). Retrieved on 20 April 2012.
  19. ^ HT:India successfully test fires Agni-V, takes a giant stride. Hindustantimes.com (2011-11-15). Retrieved on 20 April 2012.
  20. ^ Y. Mallikurjan and T.S. Subramanian (2012年4月23日). “Agni-V propels India into elite ICBM club”. The Hindu. http://www.thehindu.com/news/national/article3330921.ece?homepage=true 2012年4月23日閲覧。 
  21. ^ India test launches Agni-V long-range missile”. BBC. First Post (2012年4月19日). 2012年4月19日閲覧。
  22. ^ Y. Mallikurjan and T.S. Subramanian (2012年4月20日). “In Wheeler Island, a perfect mission sparks celebrations”. The Hindu. http://www.thehindu.com/news/national/article3332940.ece 2012年4月20日閲覧。 
  23. ^ IANS (2012年4月20日). “Agni-V can reach targets 8,000 km away: Chinese researcher”. The Times of India (Beijing). http://timesofindia.indiatimes.com/world/china/Agni-V-can-reach-targets-8000-km-away-Chinese-researcher/articleshow/12742984.cms 2012年4月20日閲覧。 
  24. ^ “India downplaying Agni-V’s potential: Chinese expert”. First Post. http://www.firstpost.com/world/india-downplaying-agni-vs-potential-chinese-expert-282176.html 2012年4月20日閲覧。 
  25. ^ DRDO readying design for 8,000 km-range Agni-V
  26. ^ DRDO to make missiles lighter, cost-effective
  27. ^ Agni V, next goal of DRDO
  28. ^ Agni-V design completed; to be test-fired in 2010
  29. ^ a b http://news.rediff.com/report/2009/oct/12/what-makes-5000-km-range-agni-5-missile-deadlier.htm
  30. ^ http://in.reuters.com/article/topNews/idINIndia-46059620100210?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

関連項目[編集]