アガルタ

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アガルタAgartha[1])とは、地球の中心にあると言われた高度な文明を持つ社会・伝説上の理想郷、または異世界の名称である[2]

概要[編集]

アガルタは、地球(世界)の中心にある(またはそこから行き来できる)という、理想世界またはその都市の名称である。諸説あるが太陽に準じる光源と過酷な自然環境、それと共存する高度な科学文明と精神社会、超能力を含む超人的な特異能力を持つきわめて長寿な人類や動植物が描かれることが多い。

天動説地動説と並ぶ学説であった地球空洞説で強く支持され、また神智学神秘主義の世界ではよく知られたテーマともなっており[3]、実際に東西の多くの科学者や権力者、探検家が捜し求めた。自然(地球)崇拝や密教のなど理想郷を示すシャンバラ Shamballa(シャングリラとも)は、アガルタへの入り口(またはその首都の一部)であるという。

大航海時代以降から20世紀末の科学の発展により(大衆オカルティズムの埒外では)根拠とされた地球空洞説とともに急速に支持を失った。対照的に永いあいだに語られた世界観は、古典的SF設定としての地位を獲得した。

ポーランドフェルディナンド・アントニー・オッセンドフスキーen:Ferdynand Antoni Ossendowski)が1920年に著した旅行記『獣・人・神々』は、アガルタについて論じている。「アガルタ」の神話はかつてインドでそう呼ばれたように「シャンバラ」 Shambhala とも呼ばれている。そこはイニシエートたち(initiates、秘儀参入者)が住まい、人類の霊的指導者である「大師たち」(the Masters)が率いる地下の国であるという。

フランスアレクサンドル・サン=ティーヴ・ダルヴェードルen:Alexandre Saint-Yves d'Alveydre)は、「かつてモーセイエスとが布いた戒律をキリスト教が履行し尽くした暁には」(これはかれにとって「われわれの世界に存在するアナルシー(無政府状態)がシナルシー(共同統治)に置き換わる時」を意味する)秘められたアガルタの世界とそのすべての叡智と富は全人類にアクセス可能になるだろう、と主張した。サン=ティーヴは著書『インドの使命』のなかで、アガルタがチベットヒマラヤ山脈にある実在の場所であるかのように「生き生きと」描写している。サン=ティーヴ版のアガルタ史は、「同調」を通じて彼自身が受け取った「啓示された」情報に基づいている[4]

シャンバラの概念は金剛乗仏教とチベットの時輪タントラの教義において格別に重要なものであるが、ブラヴァツキー夫人神智学協会によって西洋で新たな生命を与えられた。金剛乗仏教における多くの概念と同様に、シャンバラという観念には「外的」「内的」「秘密」の意味があるといわれている。外的意味においては、シャンバラは物理的な場所に存在するものと理解される。しかし相応のカルマを有する人物のみがシャンバラにたどり着き、あるがままのシャンバラを体験することができる。この社会がどこに位置するかについて様々な見解があるが、中央アジア、チベットの北にあるとされることが多い。「内的」および「秘密の」意味が示すのは、シャンバラが何を象徴しているかという霊妙かつ深遠な理解のことであり、一般に口承でもって伝えられる。アリス・ベイリーはそれを異次元的あるいは霊的なリアリティへと変形させた。リョーリフ夫妻はシャンバラは霊的面と物理的面の両方において存在すると考えた。

ルネ・ゲノンの著書『世界の王』にもアガルタについての記述がある。

その他、多くの伝記に登場する。

ザ・スモーキー・ゴッド[編集]

ウィリス・ジョージ・エマーソンの『煙の神、ザ・スモーキー・ゴッド』(The Smoky God、1908年)は、地下の文明があるという発想の源泉となった文学作品のひとつである。本書はオラフ・ヤンセンという名のノルウェー人船員の手記という体裁を取っている[5]。この本はヤンセンの帆船が北極にある地球中央への入り口を通って航行したと主張している。著者によれば、彼は地下コロニーのネットワークにいる住人と2年間を共に過ごした。エマーソンは彼らの身長が12フィートもあり、その世界は「煙がかった(smoky)」中心太陽に照らされていたと書いている。エマーソンは彼らの首都が本来のエデンの園であると主張した。エマーソンはアガルタという名を用いなかったが、 Agartha - Secrets of the Subterranean Cities のような後代の作品は、ヤンセンが出会ったと主張される文明とアガルタを同一視し、その住人をアガルタ人と呼んだ。

関連項目[編集]

参照[編集]

  1. ^ Agartta、Agarta とも。サン=ティーヴ・ダルヴェードルは Agarttha と綴り、オッセンドフスキーはアガルティ Agharti と記すOssendowski, Ferdinand; Palen, Lewis Stanton (2003), Beasts, Men and Gods, Kessinger Publishing, p. 118, ISBN 9780766157651, http://www.gutenberg.org/etext/2067 
  2. ^ Eco, Umberto (2006年8月5日). “Commentary: Spheres of influence”. The Observer. http://www.guardian.co.uk/books/2006/aug/05/umbertoeco 
  3. ^ Tamas, Mircea Alexandru (2003), Agarttha, the invisible center, Rose-Cross Books, ISBN 9780973119114, http://books.google.com/books?id=KyFHAAAACAAJ 
  4. ^ 音楽に関する思想史の著書等で知られる歴史家ジョスリン・ゴドウィンは、サン=ティーヴはアストラル投射によってアガルタを訪問することができ、たとえアガルタが実在のものでなくとも、かれ自身はフィクションとしてでなくあくまで自分が実際に見た(と思い込んだ)ことを書いたのではないか、と考察している(ジョスリン・ゴドウィン 『北極の神秘主義』 参照)。
  5. ^ Beckley, Timothy Green; Jansen, Olaf (1993), The smoky god and other inner earth mysteries, Inner Light Publications, ISBN 9780938294153, http://www.worldcat.org/oclc/43249086 

外部リンク[編集]