わたしは真悟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

わたしは真悟』(わたしはしんご)は、楳図かずおの長編SF漫画1982年から1986年まで『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に連載された。恐怖漫画の第一人者である楳図かずおが、恐怖テイストを控えめにして、神とは何か、意識とは何かといった、形而上学的なテーマに挑んだ意欲作。

表紙の美しい扉絵、産業用ロボットの日本における受容とその社会的影響、「奇跡は誰にでも一度おきる だがおきたことには誰も気がつかない」という謎めいたメッセージ、血管や神経を持った生物であるかのように描かれたロボットの内部構造、人間の悪意の存在するところに必ず現れる謎の虹など、見どころ満載である。

21世紀となった今ではコンピュータやロボットの描写に古さも目立つが、昭和時代の作品であることを考えると、現代のネットワーク時代を見事に予言していたという点でも注目される。

なお、1991年10月14日から11月1日まで、NHK-FM放送のサウンド夢工房にてラジオドラマ化されている(全15回)。


あらすじ[編集]

町工場労働者の息子「近藤悟(さとる)」と外交官の娘「山本真鈴(まりん)」の二人の小学6年生は恋に落ちる。しかしまりんの父親の海外勤務にともない、身分違いの2人の恋は引き裂かれる。大人になることを拒否した2人は、自分たちの子供を作るため、さとるの父親が働く町工場の産業用ロボット「モンロー」の指令に基づき、東京タワーの頂上から救助にきたヘリコプターに飛び移る。その瞬間、2人の秘密の遊び道具であった産業用ロボット「モンロー」は自我に目覚め、意識としての進化を開始。産業用ロボットは、みずからの出自を求める旅を重ね、伝えられなかったさとるの愛の言葉を、まりんに伝えるべく、成長を続ける。

自らを両親の名前から1文字ずつとって「真悟」と名づけた「モンロー」は、自分が単なる産業ロボットではなく、人間の悪意をエネルギーとする秘密兵器を生産すべく秘密プログラムのブラックボックスを植えつけられた存在であり、母親であるまりんを自分自身が苦しめているという自らのを知る。真悟はさらに、世界中の意識とつながる意識としての進化を続け、エルサレムを破壊した瞬間に神を超えた存在「子供」としてこの世に生まれる奇跡をおこす。

だが、その後は、エネルギーと記憶を失い続け、聞くことの出来なかった、まりんの返答をさとるに伝える旅に出る。真悟の全てのエネルギーが尽きるとき、真悟はさとるに再会し、最後にアイの2文字が残った。

登場人物[編集]

近藤悟(さとる)
山本真鈴(まりん)
ロボット工場の見学で、さとると出会い、恋に落ちる
真悟
産業用ロボットとしては「モンロー」と呼ばれていた
ロビン
まりんに欲情し、まりんの大人になるスイッチを押してしまう悪役
九鬼
さとるの父親の同僚。ロボットの導入で仕事がなくなり解雇される
しずか
さとるの隣人の女の子。まりんに嫉妬するが、真悟がさとるとまりんの子供であることを理解してからは、真悟の味方
沼田
通称「ヌー」。悟の同級生

影響と論評[編集]

恐怖漫画家が書いた、この形而上学的作品に影響を受けた文化人は多い。たとえば、岡崎京子は自らの作品中で、真悟誕生の瞬間である「333のテッペンカラトビウツレ」のシーンに言及していたりする。

参考資料[編集]

  • 『恐怖への招待』(楳図かずお、河出書房新社)に、作者自身による解説がある。
  • 雑誌『現代詩手帖』1985年10月号が「特集=超コミック」と題し、岡崎乾二郎「333からトビウツレ」を所収。
  • 雑誌『文藝』1987年夏号に、四方田犬彦「成熟と喪失」を所収(のちに単行本『もうひとりの天使』所収・河出書房新社)。
  • 雑誌『ユリイカ 詩と批評』の2004年7月号「特集*楳図かずお」に、高橋明彦の論文「わたしは真悟、内在する高度」を所収。
  • 雑誌『ユリイカ 詩と批評』の2004年7月号「特集*楳図かずお」の樫村晴香の論文「Quid ?ソレハ何カ 私ハ何カ」を所収。