やっかい詩人ハルフレズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ハルフレズハッルフレズ・オーッタルソン[1]とも。Hallfreðr Óttarsson)または(やっかい詩人)ハルフレズ[注釈 1](やっかいしじんハルフレズ。Hallfreðr vandræðaskáld)(965年頃 –1007年頃)は、アイスランドスカルド詩人である。

解説[編集]

ハルフレズは『ハルフレズのサガ』の主人公でもある。そのサガによると、ハルフレズは最初はハーコン・シグルザルソン、次にノルウェー王オーラヴ1世、そして最終的にはエイリーク・ハーコナルソンの下で詩を作っている[2]。ハルフレズ作の詩は、かなりの数が主に『ハルフレズのサガ』と『王のサガ』(en)に残されているが、いくつかの断片は『詩語法』でも引き合いに出されている[注釈 2]

異教徒であったハルフレズは、オーラヴ1世への親愛の情から洗礼を受け[3]、王に名付け親になってもらった[4]。しかし彼はその後も旧来の信仰を捨てられず[3]、また王に関する詩を作っては、「王が詩を聞いてくれなければキリスト教の教えを忘れる」などと言ったため、王から「やっかい詩人と呼ぶにふさわしい」と評された[5]

ハルフレズはその詩節(Lausavísur)[1]において、著しく個人的な感情を謡っている。彼の感情的な生き方と、特に、オーラヴ1世の指導の下での異教(en)からキリスト教(en)へ悩み抜いた末に不承不承に改宗した彼の思いが表れている。以下はその一例である。

Ǫll hefr ætt til hylli
Óðins skipat ljóðum
(algildar man'k) aldar
(iðjur várra niðja);
en trauðr, því't vel Viðris
vald hugnaðisk skaldi,
legg'k á frumver Friggjar
fjón því't Kristi þjónum. Lausavísur 10, Whaleyによる版
(大意)
多くの詩人がオーディンに気に入られようと優れた詩を作ってきた
自分もオーディンの力を愛してきたが、キリストに仕える今は彼を憎んでいる[6]

ハルフレズがオーラヴ1世から、キリスト教に改宗しなかった「先見の」ソルレイフ(賢きトールレイヴ[7]とも)の殺害か失明を命ぜられた際、彼は王の命令を完全に遂行できず、ソルレイフの片眼を奪うに留めた[8]。後にオーラヴ1世が倒れると、ハルフレズはヤール英語版のエイリークの殺害を企てた。ハルフレズはエイリークに捕らえられ殺されかけたが、その場に居合わせたソルレイフが取りなして、エイリークに詩を献上させた。その詩を褒めたエイリークはハルフレズを無事に帰した。その後のハルフレズからは気力が失なわれていた[9]

死の間際、ハルフレズは、最期の時に自身がただ一つ恐れるのが地獄であり神の導きを求めていることを、詩に謡っている[10]

Bergsbók写本は『Óláfsdrápa Tryggvasonar』をハルフレズの作品であるとしているが、この帰属は現代の学者には認められていない。

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ 『スカルド詩人のサガ』で確認した表記。他にみられる日本語表記には下記のものがある。
    • ハッルフレズ・ヴァンドレザスカールド・オッタルソン(厄介者詩人) - 『サガの社会史 中世アイスランドの自由国家』(J.L.バイヨック著、柴田忠作、井上智之訳、東海大学出版会、1991年)324頁
    • ハルフレズ・オッタルソン - 『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -(二)』(スノッリ・ストゥルルソン著、谷口幸男訳、プレスポート・北欧文化通信社、2009年、ISBN 978-4-938409-04-3)129頁
    • ハッルフレズ・オーッタルスソン - 『アイスランド・サガ 血讐の記号論』(J.L. バイヨック著、柴田忠作訳、東海大学出版会、1997年、ISBN 978-4-486-01408-9)358頁
    • 迷惑詩人ハルフレズ - 『「詩語法」訳注』33頁
    • ハッルフレズ〈難物詩人〉 - 『オージンのいる風景』261頁
    • ハッルフレズ・オーッタルソン〈難物詩人〉 - 『オージンのいる風景』253頁
    • 〈難物詩人〉ハルフレッド - 『北欧神話と伝説』(ヴィルヘルム・グレンベック著、山室静訳、新潮社、1971年)33頁
    • 〈厄介な詩人〉ハルフレッド - 『サガとエッダの世界 アイスランドの歴史と文化』(山室静著、社会思想社〈そしおぶっくす〉、1982年)88頁
    • ハルフレド - 『北欧神話』(H.R.エリス・デイヴィッドソン英語版著、米原まり子、一井知子訳、青土社、1992年、ISBN 978-4-7917-5191-4)292頁
  2. ^ たとえば『「詩語法」訳注』10頁、ハルフレズがハーコン侯のために作った詩など。

出典[編集]

  1. ^ a b 『オージンのいる風景』253頁。
  2. ^ 『スカルド詩人のサガ』105-158頁。
  3. ^ a b 『北欧神話と伝説』101頁。
  4. ^ 『スカルド詩人のサガ』121頁。
  5. ^ 『スカルド詩人のサガ』121-122頁。
  6. ^ 『オージンのいる風景』229頁、『スカルド詩人のサガ』123-124頁掲載の日本語訳に基づく大意。
  7. ^ 『北欧神話』(デイヴィッドソン)292頁。
  8. ^ 『スカルド詩人のサガ』128-131頁。
  9. ^ 『スカルド詩人のサガ』153-155頁。
  10. ^ 『スカルド詩人のサガ』157-158頁、『北欧神話と伝説』102頁。

参考文献[編集]

英語版[編集]

※日本語訳にあたり直接参照していない。

日本語版[編集]