ねじまき鳥クロニクル
『ねじまき鳥クロニクル』(ねじまきどりクロニクル)は、村上春樹の長編小説。
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[編集] 概要
- 第1部 泥棒かささぎ編(1992年『新潮』10月号 - 1993年8月号)
- 第2部 予言する鳥編(1994年4月 新潮社より書き下ろし)
- 第3部 鳥刺し男編(1995年8月 新潮社より書き下ろし)
の、3部からなる。
1991年、村上がプリンストン大学に客員研究員として招聘された際、滞在1年目に1部と2部が執筆された。その後、加筆と推敲をあわせて、第3部までが出版されるまでに4年半の歳月が費やされている[1]。村上の小説としては初めて、戦争等の巨大な暴力を本格的に扱っている。
2002年時点で、単行本・文庫本を合わせて227万部が発行されている。
[編集] 評価
1996年に読売文学賞を受賞した。英語を始めとする各国語に翻訳されている。ジェイ・ルービンによる英語版は国際IMPACダブリン文学賞にノミネートされた。
[編集] 他の作品との関係
短編集『パン屋再襲撃』に収録された「ねじまき鳥と火曜日の女たち」を改稿したものとなっており、『ねじまき鳥クロニクル』の第1稿が執筆された後、推敲によって大幅に削られた部分が後の『国境の南、太陽の西』となった[1]。
この小説で取り上げた、戦争に代表される大きな暴力の根源がどこにあるのかという疑問が、後に『アンダーグラウンド』『約束された場所で』の執筆の大きなきっかけとなった。また、『日出る国の工場』で取材を行ったカツラ工場の話題が作中に登場し[2]、ノモンハン事件を取り上げたことで雑誌社から声が掛かりノモンハンへと旅行している[3]。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
[編集] あらすじ
会社を辞めて日々家事を営む「僕」と、雑誌編集者として働く妻「クミコ」の結婚生活は、それなりに平穏に過ぎていた。しかし、飼っていた猫の失跡をきっかけにバランスが少しずつ狂い始め、ある日クミコは僕に何も言わずに姿を消してしまう。僕は奇妙な人々との邂逅を経ながら、やがてクミコの失踪の裏に、彼女の兄「綿谷ノボル」の存在があることを突き止めていく……。
1984年6月から1986年の冬が主な舞台。作品を通して「水」のイメージで書かれている[1]。
[編集] 登場人物
- 僕(岡田亨、おかだ とおる)
- 以前は法律事務所の下働きをしていたが、現在は無職。叔父から安く借りている世田谷の家で、妻と猫と住んでいる。
- 30歳で身長172cm、体重63Kg。カラマーゾフの兄弟の名前をすべて言え、炊事、洗濯、掃除などの家事や水泳を好む。
- クミコ(岡田久美子、おかだ くみこ)
- 「僕」の妻であり旧姓は綿谷。編集者として働き、副業でイラストを描いている。元運輸省キャリアを父に、上級官僚の娘を母に持つ。
- 9歳年上の兄(ノボル)、5歳年上の姉(食中毒で死亡)との3人兄妹の末っ子。東京生まれだが、幼少の頃に親せきのいざこざから、新潟の祖母に預けられて育った。
- 死んだ姉以外の家族には心を閉ざし続けていたが、「僕」に対しては心を開くようになり、やがて結婚に至ったという経緯がある。
- 綿谷昇(ワタヤ ノボル)
- 久美子の兄。東京大学経済学部卒、イェール大学大学院に留学などの後、東大大学院を出て研究者となる。離婚歴があるが、現在は独身。
- 頭が切れるがきわめて不快な人物であり、その存在自体が「僕」を苛立たせる。マスメディアに登場するようになり、やがて政界への進出を果たす。
- 加納マルタ
- 水を媒体に使う占い師であるが、一切お金は取らない。不思議な直観を持つ。いつも赤いビニールの帽子をかぶっている。
- マルタ島で修行をしていた経験があり、彼の地における水との相性が良かったために「マルタ」を名乗るようになった。
- 加納クレタ
- 加納マルタの5歳年下の妹で、姉と同様の素質を持つ。マルタの助手。ジャクリーン・ケネディのような髪型とメイクをしている。
- 姉によって「クレタ」と名付けられるが、実際にクレタ島に行ったことはない。綿谷ノボルに「汚された」経験がある。
- 笠原メイ
- 岡田家の近所に住む女子高校生。バイクによる事故でケガをしてから、それを理由に高校には通わず、かつらメーカーでアルバイトをしている。家の庭で日光浴をしたり、裏の路地を観察している。「僕」に対しては命令口調と「上から目線」の態度を取る事が多い。
- 本田さん、本田伍長(本田大石)
- 北海道旭川出身。綿谷家が一時期贔屓にしていた占い師。ノモンハン事件より少し前の作戦で間宮中尉と出会い、彼の命を救う。ノモンハン事件の時に聴覚を失い除隊。
- 本田さんの大きな後押しにより、「僕」とクミコの結婚が叶った。
- 間宮中尉(間宮徳太郎、まみや とくたろう)
- 広島県出身。ノモンハン事件より少し前の小規模な作戦で本田伍長と出会い、運命的な体験をする。当時は兵要地誌班に所属。戦後、シベリアに抑留される。帰国後、教職に就き定年を迎える。
- 現在は簡単な農業などを営むが、本田さんからの遺書を受けとり、「僕」のもとへ形見分けに訪れる。
- 赤坂シナモン
- ナツメグの息子、6歳の時に声を失う。聴覚はあり、知能は高い。顔の表情と手話のような手振りで、違和感のない意思疎通ができる。
- ナツメグの仕事の補佐をし、音楽の素養とコンピュータの知識、自動車の高度な運転能力を持つ。
- 牛河
- 国会議員秘書。裏の仕事を専門としている。長年、綿谷の家に仕えてきた。
- 身長150cm余りで髪は禿げあがり、乱杭歯である。両切りのピースを吸い、いつも薄汚いスーツを着ている。
- 電話の女
- 「僕」に電話をかけてくる正体不明の女性。なぜか「僕」の私生活を詳しく知っていて、電話越しに性的な挑発をする。
- 猫(ワタヤノボル → サワラ)
- 「僕」の家の飼い猫。何かの予兆を示すかのように、ある日突然いなくなる。
[編集] 時代設定と時間軸
「第1部 泥棒かささぎ編」と「第2部 予言する鳥編」は本編の始まる前にそれぞれ、 「一九八四年六月から七月」、「一九八四年七月から十月」と記されている。ただし、第1部の第1章「火曜日のねじまき鳥、六本の指と四つの乳房について」と第2章「満月と日蝕、納屋の中で死んでいく馬たちについて」は、物語全体の前奏曲のように、「僕」が30歳になったことを機に、「四月のはじめにずっとつとめていた法律事務所を辞めて一週間ばかりたった頃から」の回想シーンとなっている(p. 14、p. 43)。
「第3部 鳥刺し男編」では本編の前に明示的な記載はないが、第3章の「冬のねじまき鳥」で第2部終了以降、すなわち1984年10月からの出来事がダイジェスト的に叙述され、実際に物語が動き出すのは第4章「冬眠から目覚める、もう一枚の名刺、金の無名性」の85年3月半ばからである。
物語の終わりは、第38章「アヒルのヒトたちの話、影と涙」で、「路地」で「僕」が出会った頃は16歳だった笠原メイの17歳時の手紙の内容と最終章である第41章「さよなら」における笠原メイとの再会の記述から1985年12月であることがわかる。さらに最終章ではクミコの初公判が1986年春頃にあることが示唆される。
なお、第1章「笠原メイの視点」、第2章「首吊り屋敷の謎」は、それぞれ1985年12月7日付けの週刊誌を読んだ笠原メイからの手紙と、その週刊誌の記事からなっており、第1部とは逆に、未来の時間軸から始まる円環構造となっている。
整理すると、
- 第1部 - 1984年6月-7月(1章と2章で4月-5月を回想)
- 第2部 - 1984年7月-10月
- 第3部 - 1985年3月-1985年12月(1章と2章で1985年12月を先取り、3章で1984年10月から3月をダイジェスト)
なお、『1Q84』の時代設定も、BOOK 1が1984年4月-6月、BOOK 2が1984年7月-9月で、主人公の年齢も29~30歳に設定されている。ただしBOOK 1には実際には、「7月半ば過ぎ」までの記述がある。
[編集] 書誌
- 単行本
- 1995年8月 新潮社:第1部 泥棒かささぎ編 ISBN 978-4103534037 第2部 予言する鳥編 ISBN 978-4103534044 第3部 鳥刺し男編 ISBN 978-4103534051
- 文庫本
- 1997年10月(2010年4月には新装版が刊行。活字が大幅に拡大) 新潮文庫:第1部 泥棒かささぎ編 ISBN 978-4101001418 第2部 予言する鳥編 ISBN 978-4101001425 第3部 鳥刺し男編 ISBN 978-4101001432
[編集] 外部リンク
- East Meets West ニューヨーク・タイムズによる書評。
[編集] 脚注
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