ニコイチ
ニコイチもしくはにこいちとは複数の個体から1つの個体を製作することであり、主に以下のことを指す。
- 機械・器具の修理に際し、複数の不良個体から部品を組み合わせ、一つの正常な個体にすること。複数の個体がそれぞれ別な個所で故障あるいは破損している場合に行われ、一方の個体の故障個所に他方の個体から取り出した良品を組みこむことで修理を行うもの。
- 機械・器具の製作に際し、複数の異なるモノを組み合わせて一つのモノを製作すること。
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[編集] 概要
かつて自動車の中古車市場などで、事故車などから部品を取って一台の車に仕立て上げた粗悪品を示す言葉として使われていたが、その後一般名詞化したものと思われる。二個で一個の略から出た言葉である。
なお、ある個体から部品を取り外して別の個体に与える場合、部品を提供する側は部品取りともいわれる。部品を提供する対象は1個体とは限らず、故障箇所が相互に異なれば複数の個体に与えて稼動させることもできる。反対に故障個所の多い個体の場合には3個体あるいは4個体を用いないと1個体の良品を再生できない場合(この場合、サンコイチやヨンコイチと呼ばれることもある。)もあるが、これらも広い意味でのニコイチといえる。
通常、製造メーカー自身、あるいはメーカー指定の修理会社等で保守サービスを行う場合には、製造メーカーが供給する修理用部品を取り寄せて故障個所や破損個所を修理する。しかし、製造メーカーや修理会社による修理が受けられない場合で、どうしても修理を要する場合には、やむなくこのような修理方法をとらざるを得ない。このような必要が生ずることがあるのは例えば次のような場合がある。
製造メーカーは製品の製造終了後一定期間は保守サービスを提供するが、その期間が過ぎると修理用部品が無くなるなどの理由で修理を受け付けないことがある。また、メーカーが倒産、解散あるいは業態変更したことなどにより、その製品の保守サービスができなくなることがある。古くなってもその製品を継続して使用したいと考えるユーザーが選択できる修理方法のひとつがニコイチ修理である。無線機、オーディオ製品、フィルムカメラ、旧車などの古いが価値のある製品(ビンテージ製品)ではよくこうした修理方法が必要になる。
また、メーカー修理が可能であるにも拘らず、修理費用の節約のために行う場合もある。特にエレクトロニクス技術を多用した機器では、機器の高密度実装が進んだ結果、修理時の交換単位が大きくなった。初期の真空管式テレビ受像機では、切れた真空管や焼き切れた抵抗器、容量の抜けたコンデンサなどの個別の部品を交換するなどの修理が行われたが、近年では機能の大半を占める回路基板アセンブリをそっくり交換する方法で修理を行うことが多い。パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどでも、そうした修理方法を採用する場合がある。このため修理費が高くつき、消費者は修理よりもむしろ買い換えを選びたくなることがある。中古品の修理などはまさにそうした場合で、メーカー修理によらず、ニコイチ修理で済ませることで費用を節約するユーザーや、非メーカー系の修理業者がでてくる所以である。当然のことながら正規の修理ではないので、このようにして修理された製品をメーカーに持ち込んでもサポートをうけられないことがあり、修理は自己責任で行う必要がある。
こうしたニコイチ修理のためには、同等な製品が複数あることが必要であり、特に古い製品の場合にはまずニコイチの相方を探すことから始めなければならず、ジャンクを探して中古販売店やネットオークションを頼ることなどが必要になる。
戦争における前線でも、戦場から破損した兵器を複数回収して正常な兵器を得ることも行われる。例えば自軍の戦車のうち、車体が無事なものと砲塔が無事なものを組み合わせて稼動する1両の戦車とすることもある。或いは敵軍の兵器を鹵獲した場合には、修理用の部品を入手することは望めないので複数の武器から稼動するものを仕立てて活用することも出来る。その他に、補給が滞った場合にも前線における整備で特定の個体を部品取りにして他の個体の整備に必要な部品を確保することもあり、共食い整備という。平時においても、経済状況が思わしくなく十分な兵器を賄えない場合や、輸入した兵器について何らかの理由で整備用の部品の供給が止められた場合には、やはり共食い整備で稼動する兵器を確保する事が行われる。
なお日本の自衛隊においても73式小型トラックに対し共食い整備が行われている(「自動車におけるニコイチ」で記述)ほか、財政難から東日本大震災の影響で水没したF2戦闘機に対してニコイチ修理が行われる模様である。[1]
[編集] 自動車におけるニコイチ
自動車においてのニコイチは、主に
- 接合車。モノコックそのものを大きく切断しニコイチしたもの。
- 部品取り車とのニコイチ。他のものにおけるニコイチと同様、基本的にボルトオンで交換できるパーツを交換して修理するケース。
- 部品のニコイチ製作。特にエンジンスワップや顔面スワップなどにおいて、必要な部材をニコイチで作ってしまう。
- スワップチューン(エンジンスワップや顔面スワップなど)
- 偽装ナンバー。警察における隠語で、盗難車から外したナンバーを正規のナンバーから付け替える。
という意味がある。
接合車は、ほぼ全ての中古車オークション会場では出品が禁止されている。なお、屋根だけを交換したもの、同じ車体を切断し溶接したものも全て接合車の扱いとなる。車両保険で全損扱いになった事故車を安く(または無料で)引き取り復活させ、転売してもうけるための手段として使われる場合が多い。接合車は存在自体が詐欺であると言える。
もちろん、上述のように自動車修理・カスタムにおける「ニコイチ」は接合車製作を必ずしも意味するものではない。様々な部品の移植(不動車に部品取り車の同型エンジンを搭載するなど)という意味での「ニコイチ」はよくあることである。ネットオークションや個人売買において部品取り車が車体丸ごとで売られることは珍しいことではなく、特に旧型車になってくると部品供給がおぼつかなくなる不安から複数の部品取り車を保有するオーナーもいる。また、カスタムカーの世界においては装着されているカスタムパーツ目当てで部品取り車を購入し、自車に移植するというケースも考えられる。この場合、「ニコイチ」と中古パーツを利用した修理・カスタムはパーツ購入の単位が違うだけで境界線はあいまい、とも言える。
ちなみに、自衛隊においても73式小型トラック(旧型)をニコイチ目的で廃車にしている。これは理由としては一般の旧車と殆ど同じで、市販型三菱・ジープの生産終了により起こりうるメンテナンスパーツの枯渇に備えるためである。中には新型(通称:パジェロ)では対応できない分野もあるという事情もあり、部品取りの確保を目的として耐用年数が規定に達した車両は走行可能な状態であっても廃車としている。
またスワップチューン(エンジンスワップや顔面スワップなど)も「ニコイチ」と呼称されることがあるほか、それらに使う部品をボディ側に使われていたものとエンジン側に使われていたものとの「ニコイチ」で製作することもある。この例としてRPS13型180SXに、S13型シルビアのフロントを装着した日産・シルエイティ等がある。
[編集] 自動車以外でのニコイチ
- 鉄道車両においては1975年に岩手開発鉄道が夕張鉄道キハ200形気動車を購入した際に行ったものが有名。古くは二軸車を2両繋いで1両のボギー車にする改造もしばしば行われていた。
- プラモデルなどの模型の世界では複数の市販キットを組み合わせて違うタイプの機体を製作したり、複数のメーカーの同じ機種のキットから良い部分を組み合わせて完成度の高い作品を製作する手法を指す。ミキシングビルドともいう。
- 小惑星探査機のはやぶさは4基あったμ10型イオンエンジンの内3基について、1基のエンジンとしては機能しない(セットで動作するイオン源と中和器のうち、それぞれどちらかが故障している)状態に陥った。しかし故障に備えて準備していたバイパスダイオードの配線を用いて、1基のイオン源と別の1基の中和器とを組み合わせた推進力確保に成功し、あわせて1基分の推力を得られるようにした。これは世界で初めて宇宙機のエンジンについてニコイチが行われた例である。
- 海上自衛隊の護衛艦・しらねが2007年にCICに火災を起こした後修理のため、退役時期の近づいていたはるなのCICを移して修理している(「はるな」は予定通り廃艦)。
- ソ連軍の短機関銃であるPPsは初期モデルのPPs42がモシン・ナガンM1891/30のバレルを分断し1本のライフルバレルを2本のサブマシンガンバレルにするよう設計されていた。これは独ソ戦のさなかレニングラードを独軍に包囲され物資が何もかも足りなかった状況下で仕方なく行われた苦肉の策であった。
[編集] その他
上節で示すように、ニコイチとは元々「複数の個体を組み合わせて一つの個体を生み出すこと」を指すが、そこから転じ、二つのものを一組として扱うことも意味するようになった。
- オートバイあるいは、普通自動車に二人で乗車している場合をニコイチと言うこともある。オートバイのタンデム乗車は、二人で一体となって走るのであるから、言葉的には適当な表現である。
- 最近は女性ファッション誌で、「2娘1」と書いてニコイチと読ませ、二人で一つのアイテムを共有する言葉として雑誌側が仕掛けている例もある(2009年9月12日 NHK総合テレビ『東京カワイイTV』より)。
- 警察官(特に捜査員や機動捜査隊員)の隠語で、前後のナンバープレートが異なる自動車のこと。当然、前の簡単に外せるプレートが偽造もしくは盗まれたものであり、犯罪に関わっている疑いが濃厚。照会センターに問い合わせて、目の前の車と登録されている車の車種が異なる事で発覚する事が多い。