肥満嗜好

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肥満嗜好(ひまんしこう、英語: fat fetishism)とは、肥満体型の人に性的に惹かれる性的フェティシズムの一種。一般的には「デブ専門」の省略形 デブ専(でぶせん)として知られる。

概要[編集]

本来、脂肪飢餓を救う貴重なエネルギー源であり、それを多く蓄えた肥満体形は、時代や場所によって「富の象徴」としてもてはやされた。例えば、の理想の女性像は「濃麗豊肥(豊かに太った美人)」であり[1]、楊貴妃も豊満だったとされている。西洋にもルノワールのように豊満な女性を表現した芸術家がいる。

近代になると、生活も豊かになり脂肪を蓄える必要もなくなったことや美意識の変化から、徐々にスレンダーな体型が好まれるようになり、雑誌やTVなどマスメディアに登場する著名人やタレントも痩せた人が多くなった。そんな"痩身至上"の中にあって、太った異性に魅力を感じることが特別なこととされるようになった[2]

しかし、行き過ぎた痩身至上主義からの拒食症や、過度なダイエットで死亡する事例も出てきた反動から、「サイズ・ゼロ」とも言われる極端に痩せたモデルが、BMIを理由にファッションショーへの出場を拒否された事例もある[3]。また「プラスサイズモデル」と言われる豊満な女性が、週刊誌『PLAYBOY』のモデルを務めるなど、振り子は逆に振れている[4]

日本でも、ファッション雑誌CanCam』が、太った女性が可愛らしいとして「ぷに子」という愛称をつけて呼んだりしている。尚、同誌では身長155cmで体重52~64kg以上の女性を「ぷに子」としており、これは大体先述の楊貴妃(164cm、60kg、諸説あり[5])とほぼ同じ身長・体重である。デブ専を標榜するAVメーカーすらある[6]

一部には「デブ専」と「ぽっちゃり好き」を呼び分ける向きもあるが[7]、両者に明確な違いは存在しない。

2020年代のアメリカにおいては、一般に「スリム」という言葉が誉め言葉として通用しなくなりつつある。というのも、この時代のアメリカにおいては「良いスタイル」の基準がなくなりつつあるためである。寧ろ侮辱の意味で受け止められる事さえある。

出典[編集]

  1. ^ 阮 栄春(げん えいしゅん)「張僧繇仏教造像の「面短而艶」から唐時代の「濃麗豊肥」へ」『仏教造像における南伝系統の研究』早稲田大学(博士論文)、139-145頁。"文部省報告番号:乙1339号, 学位の種類:博士(文学), 授与年月日:1998-02-10"。 
  2. ^ A. E. Becker; R. A. Burwell; S. E. Gilman et al. (2002). “Eating behaviours and attitudes following prolonged exposure to television among ethnic Fijian adolescent girls”. Br J Psychiatry (180): 509-514. 
  3. ^ 永田利彦、山下達久、山田恒et al.「無視されてきたダイエットと痩せすぎの危険性―痩せすぎモデル禁止法に向けて―」『精神神経学雑誌』第120巻第9号、2018年、741-750頁。 
  4. ^ 望月望美 (2017年11月27日). “『プレイボーイ』誌、初めてプラスサイズモデルを起用!”. COSMOPOLITAN. 株式会社ハースト婦人画報社. 2019年10月13日閲覧。
  5. ^ 体重138斤的杨贵妃缘何受宠?”. 四川在线 (成都市). (2007年10月18日) 
  6. ^ (no title)”. maguro721.com. まぐろ物産. 2019年10月13日閲覧。
  7. ^ 若松正子 (2015年11月4日). “渡辺直美、ぽっちゃり好きへの持論語る「カラダ目的の人が多い」”. oricon.co.jp. 株式会社oricon ME. 2019年10月13日閲覧。