つばき、時跳び

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つばき、時跳び
著者 梶尾真治
発行日 2006年10月
発行元 平凡社
ジャンル 長編小説
SF小説
恋愛小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 315
コード ISBN 978-4-582-83342-3
ISBN 978-4-19-894299-1文庫判
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つばき、時跳び』(つばき ときとび)は、梶尾真治小説。この作品は、平凡社のPR誌『月刊百科』に、2004年9月号から2006年9月号まで「つばきは百椿庵に」(つばきはひゃくちんあんに)のタイトルで連載されており、同社より2006年10月に単行本として刊行される際に改題された。熊本を舞台に150年の時間の壁に隔てられたふたりの若者の恋を描く、タイムトラベル・ラブロマンス。

またそれを原作として成井豊脚本による舞台作品として明治座にて2010年に舞台化[1][2]NHK-FM青春アドベンチャー」にて2017年ラジオドラマ化された。

ストーリー[編集]

サラリーマンを辞め専業作家となった井納惇は、亡くなった祖父が住んでいた、そして子供の頃両親の転勤で1年間だけ住んだことのある、「百椿庵(ひゃくちんあん)」と呼ばれる古い屋敷に住むこととなった。その屋敷では、女性にしか見えないという幽霊が出ると言われていた。そんなある日、惇もその幽霊を目撃。その美しさに惹かれた惇は屋敷の中を調べ、天井裏に正体不明のからくりが仕掛けられていることを発見する。そしてその夜突然、古風な身なりで、例の幽霊そっくりの若く美しい女性が現れた。

「つばき」と名乗ったその女性は、どうやら幕末・元治の時代に百椿庵に住んでいたらしい。惇は、例のからくりはタイムマシンで、その作用でつばきが現代にタイムトラベルしてきてしまったものらしいと推測する。電気や照明などの現代の技術を目の当たりにしたつばきはショックで体調を崩してしまうが、惇が懸命に看病するうちに、ふたりは互いに惹かれていく。しかし、看病の甲斐あって数日後に回復したつばきは、屋敷の外に一歩出た途端に、現れたときと同様突然消えてしまった。惇はふたたびつばきと会うために、その方法を探る。

主な登場人物[編集]

井納 惇(いのう じゅん)
歴史小説家で、30過ぎの独身。幕末の時代から突然現れたつばきに心惹かれる。
柳井 つばき(やない つばき)
幕末の時代、百椿庵に住んでいた若く美しい女性。両親は既に亡く、兄も早世している。小さいころから母に家事を仕込まれたため料理は上手で掃除等の手際もよいが、「丙午の生まれ」であるため縁談が進まなかったらしい。炊事は女の仕事であり男は厨房に入らない等、当時の考え方にこだわりを持ってはいるものの、はっきりと自分の考えを口にしたり、現代にタイムトラベルした際の経験を受けとめ吸収するなど、惇を驚かせることもしばしば。最初に現代に現れた際、「元治の甲子」の年(西暦1864年)から来た旨を発言しており、また丙午の生まれ(直前の丙午は西暦1846年)であることから、(現代の数え方では)17か18歳ということになる。
仰烏帽子 寿(のけぼし ひさし)
通称「りょじんさん」。タイムマシンの開発者であり、最初のタイムトラベラー。だがそのタイムマシンは不完全で、その時代に留まるためには特殊なフィールドを発生させる装置を設置しなければならず、しかもそれでも約40日しか留まることができなかったらしい。
福薗 玄馬亮(ふくぞの げんばのすけ)
長岡の配下。つばきとは昔からの知り合い。松本喜三郎や長岡と共に百椿庵を訪問する。
長岡 監物(ながおか けんもつ)
細川家城代家老。りょじんさんを百椿庵に滞在させるようつばきに依頼、その未来の知識を積極的に吸収しようとする。
松本 喜三郎
実在した生き人形師。つばきを生き人形のモデルにしたいと申し出る。

こぼれ話[編集]

以下については、カジシンエッセイに記述がある。

書誌情報[編集]

舞台[編集]

2010年、『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズの舞台化を行った演劇集団キャラメルボックスの演出家成井豊による脚本・演出、福田沙紀主演で舞台化され、東京・明治座にて同年8月に上演された[1][2]

公演概要[編集]

  • 期間:2010年8月11日- 8月29日
  • 場所:明治座

キャスト(舞台)[編集]

スタッフ(舞台)[編集]

ラジオドラマ[編集]

2017年2月27日 - 3月3日・3月6日 - 3月10日まで全10回で、NHK-FM青春アドベンチャー』でラジオドラマ化され放送された[3]

キャスト(ラジオドラマ)[編集]

スタッフ(ラジオドラマ)[編集]

  • 原作 - 梶尾真治
  • 脚色 - 丸山智
  • 音楽 - 川田瑠夏
  • 演出 - 藤井靖
  • 技術 - 加村武
  • 音響効果 - 石川恭男

映画[編集]

つばき、時跳び
監督 行定勲
原作 梶尾真治
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2018年1月8日に刊行された徳間文庫版の帯にて大林宣彦が映画化を決心したことが発表され[4]、大林監督・脚本により2019年春公開を目指し全編熊本ロケでの映画化が決定していた[5][6]が、大林は体調不良に伴い辞退。大林に監督補を打診されていた熊本市出身の行定勲[7]が監督を引き継いでの映画化となり[8][9]2021年2月に熊本ロケにてクランクイン予定[8]と発表されていたが、2022年現在それ以上の続報はない。

スタッフ(映画)[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b “福田沙紀、明治座初座長 「熊本弁をしゃべりたかねー」”. 朝日新聞デジタル. (2010年6月29日). https://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY201006290097.html 2020年4月19日閲覧。 
  2. ^ a b “福田沙紀「熊本弁しゃべりたか〜」舞台「つばき、時跳び」発表会見”. 映画.com. (2010年6月29日). https://eiga.com/news/20100629/9/ 2020年4月19日閲覧。 
  3. ^ つばき、時跳び”. NHKオーディオドラマ. 2017年3月4日閲覧。
  4. ^ “徳間書店 公式サイト”. http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198942991 
  5. ^ 飛松佐和子 (2017年12月16日). “梶尾さん小説、大林監督が映画化 全編熊本ロケ”. 熊本日日新聞. オリジナルの2018年2月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180203153013/https://this.kiji.is/314643274654663777 2020年4月19日閲覧。 
  6. ^ 小張アキコ (2020年4月14日). “大林宣彦監督、死去 時をかけ抜けた“信念3部作” 新人を世に送り出し、往年女優よみがえらせた“日本映画界の巨匠””. zakzak by 夕刊フジ: p. 2. https://www.zakzak.co.jp/article/20200414-JZH23KFMQ5M47K5HQ4CBBQBTQQ/ 2020年4月19日閲覧。 
  7. ^ “角川春樹氏、大林宣彦監督と「また青春ものを一緒にやろうと」”. SANSPO.COM (産経デジタル). (2020年4月12日). https://www.sanspo.com/article/20200412-EDKJSWDOANJ4BFVR5VPVOQU2VY/ 2020年4月19日閲覧。 
  8. ^ a b 飛松佐和子 (2020年4月12日). “梶尾さん小説の映画化に意欲 大林宣彦さん 行定監督へバトン”. 熊本日日新聞. https://this.kiji.is/621897520586736737?c=92619697908483575 2020年4月19日閲覧。 
  9. ^ “芥川保志 Twitter”. https://twitter.com/JPWyva1IANAsH6X/status/1176024839057883136 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]