900トン型巡視船

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900トン型巡視船
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艦級概観
艦種 大型巡視船(PL)
前級 おじか型(海防艦型)
次級 しれとこ型巡視船
主要諸元
#諸元表参照
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900トン型巡視船英語: 900-ton class patrol vessel)は、海上保安庁が運用していた巡視船

のじま型[編集]

のじま型(公称 900トン型)は、おじか型(海防艦型)巡視船のうち「おじか」「あつみ」の代船として建造された。

おじか型は、運輸省中央気象台時代より南方定点観測(T点)業務にも充当されており、本型もこれを継承して、気象観測を主務とした。南方定点Tは四国沖(北緯29度、東経135度)に位置しており、夏季の観測期間においては台風との遭遇も頻回であったことから、そのような荒天下でも安全に観測業務を遂行できるよう、船体強度・復原性・動揺性に配慮して設計された。船型は平甲板型、任務上、長期間の行動が想定されたことから居住性にも配慮されており、士官室・観測員室・科員室には冷房が施された。また就役後に2隻とも減揺水槽(アンチローリング・タンク)を設置している。

主機関としては出力に比してコンパクトな2サイクル中速ディーゼルエンジンを採用したが、この主機方式は、海保としては唯一の採用例と考えられている。これは低速での安定した運転と、荒天避航のための速力発揮を求められたためのものであった。

なお、富士山レーダー等の気象レーダー気象衛星「ひまわり」の拡充に伴い、南方観測は昭和56年(1981年)11月に廃止された。これ以降、本型は警備救難を主任務とする巡視船として運用された。

えりも型[編集]

えりも型(公称 改-900トン型)は、おじか型(海防艦型)巡視船のうち「つがる」「さつま」の代船として建造された。

公称船型のとおり、気象観測を主任務として設計されたのじま型(900トン型)をもとに設計されている。船体の延長、深さ・吃水の削減、主機出力の増強によってわずかながら高速化を図ることで、警備救難を主任務として改設計されている。主機関としては、三井造船の2サイクル中速ディーゼルエンジンである635V2BU-45(2400 bhp / 475 rpm)が搭載された。また救難業務のため、下甲板前部に便乗者室と医務室を設置した。本型では建造時より減揺水槽を備えており、その設置位置は船体内部である。なお、1番船は北方配備用として、船体を耐氷構造とし、防滴艤装を施し、着氷時の復原力確保のため大容量のバラストタンクを設置していた。

なお、のちに450トン型巡視船の退役完了とともに3インチ単装緩射砲が廃止されたのちはこれを撤去して、兵装は20mm単装機銃のみとなっている。

だいおう型[編集]

だいおう型(公称 改2-900トン型)は、初代だいおう型(700トン型)巡視船の代替として開発された。

設計[編集]

主機出力の増加や機関部の省力化、主発電機の配電盤からの遠隔操作による自動化、OIC(Operation Information Center)室の設置などといった省力化・性能強化策を講じて改設計したものである。また減揺水槽の設置位置も、従来の船体内に対して、本型では船体外の高所に配置され、より効果が高くなっている。一方で、減揺水槽を高所に配置したことによる重心上昇を防ぐために、幅を0.4m広くしたため、常備排水量はえりも型よりも190t増加した。

本型においても、えりも型と同様に、1番船「だいおう」は北方配備用として、主機冷却水を用いた着氷防止機構を持ち、2番船「むろと」は全船冷房を施すという区別された艤装をなされた。一方で、船体は両船ともに耐氷構造を施しており、本型以降で採用された、南北いずれにも配備可能なようにする設計を共通化する方針の基本となった。また、本型を含む昭和47年度計画船艇以降では可変ピッチ・プロペラの装備が常態化している。

なお、3インチ砲の廃止後に建造されたことから、主砲はボフォース 40mm単装機関砲(60口径)とされている。

運用[編集]

本型は、初代だいおう型の代替であったため2隻のみの建造で終わった。しかしボフォース 40mm単装機関砲(60口径)による強力な火力、OIC室による強力な指揮統制能力を備えていることから、70年代から80年代においては遠距離救難体制の花形とされており、のちには量産型であるしれとこ型巡視船の原型船ともなった。その後、90年代に入って新型の1000トン型巡視船であるおじか型巡視船が就役を開始したことから、2001年に1番船が、2005年に2番船が解役されて、運用を終了した。2番船「むろと」の総航海距離は52万海里、海難出動件数は6,503件、303名を救助した。

同型船[編集]

船型 # 船名 計画年度 建造所 竣工 所属 解役
のじま型 PL-11 のじま 昭和36年度 浦賀船渠 1962年(昭和37年)4月30日 横浜第3管区 1989年(平成元年)8月18日
PL-12 おじか 昭和37年度 1963年(昭和38年)6月10日 塩釜第2管区 1991年(平成3年)9月21日
えりも型 PL-13 えりも 昭和39年度 日立造船
向島工場
1965年(昭和40年)11月30日 釜石(第2管区) 1994年(平成6年)9月22日
PL-14 さつま 昭和40年度 1966年(昭和41年)7月30日 鹿児島第10管区 1995年(平成7年)9月22日
だいおう型 PL-15 だいおう 昭和47年度 日立造船
舞鶴工場
1973年(昭和48年)9月28日 第8管区 2001年(平成13年)8月26日
PL-16 むろと 昭和48年度 内海造船
因島工場
1974年(昭和49年)11月30日 鹿児島(第10管区)
→油津(第10管区)
→塩釜(第2管区)
2005年(平成17年)1月4日

諸元表[編集]

のじま型 えりも型 だいおう型
総トン数 869 t 873 t 939 t
常備排水量 1,113 t 1,010 t 1,194 t
全長 69.0 m 76.6 m
最大幅 9.2 m 9.6 m
深さ 5.5 m 5.3 m
主機 ディーゼルエンジン×2基、2軸推進
機関出力 3,000 ps 4,800 ps 7,000 ps
速力 18.1 kt 19.8 kt 20.0 kt
航続距離 8,200 nmi 6,263 nmi 6,000 nmi
最大搭載人員 73名 72名 50名
兵装 3インチ単装緩射砲×1基
20mm単装機銃×1基
40mm単装機関砲×1基
20mm単装機銃×1基

参考文献[編集]

  • 徳永陽一郎・大塚至毅 『海上保安庁 船艇と航空 - 交通ブックス205』 成山堂書店1995年、80-81頁/160頁。ISBN 4-425-77041-2
  • 編集部「海上保安庁現有船艇の全容」、『世界の艦船』第595集、海人社、2002年5月、 55-120頁。