たかとり型巡視船

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たかとり型巡視船
基本情報
艦種 350トン型PM
運用者  海上保安庁
就役期間 1978年 - 2017年
要目
常備排水量 600トン
総トン数 469トン (旧)
全長 45.70 m
最大幅 9.20 m
深さ 4.30 m
吃水 2.87 m
主機 新潟6M31EX
ディーゼルエンジン×2基
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
出力 3,000馬力
速力 15ノット
航続距離 900海里
乗員 34名 (最大搭載人員)
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たかとり型巡視船英語: Takatori-class patrol vessel)は、海上保安庁巡視船の船級。区分上はPM型、公称船型は特350トン型[1][2]

来歴[編集]

1960年代中盤、海上保安庁は、原油輸入量の激増と石油タンカーの大型化に伴うタンカー関連海上災害の危険増大に対処するため、昭和43年から昭和52年度計画にかけて、ひりゆう型消防船5隻を整備した[1]

しかし1974年第十雄洋丸事件において、これらの消防船は十分に役割を果たしたものの、炎上しつつ市街地に向けて漂流する第十雄洋丸に対して、海上保安庁は有効な対処方法を有しておらず、結局は、巡視船艇・消防船の援護下に民間のタグボートが曳航を実施することになった。このことから、さらなる海上防災能力強化の必要が指摘されるようになり、これに応じて建造されたのが本型である[1][2]

設計[編集]

本型では、従来の巡視船としての警備救難業務とともに、第十雄洋丸事件の教訓から消防能力と曳航能力が強化されている。曳航時の復原力確保のため幅広の船型とし、また居住・作業スペース確保のため長船首楼型が採用された[1]。海上保安庁としては初めて試みる船型であったことから、設計にあたっては民間の航洋曳船などが参考にされた[2]

主機関は従来の350トン型PMと同様に、単機出力1,500馬力の新潟6M31EXディーゼルエンジン[3]を2基搭載して、それぞれ両舷の軸機を駆動する方式とされた。なお推進器は可変ピッチ・プロペラである。なお機器の実態把握・操縦制御機能は極力操舵室に集中された[1]

装備[編集]

消防装置としては下記のような装備を有する[1][2]

  • 泡沫放水銃(毎分3,000リットル)×2基
  • 粉末放射銃(毎秒35キログラム)×1基:粉末消火剤は2トンを搭載
  • 自衛噴霧ノズル

またタンカー火災を想定したことから、オイルフェンスの展張設備を有するほか、のちに油回収装置の運用能力も付与された[2]

炎上する大型タンカーを迅速に曳航するため、船尾には30トンの曳航フックとウインチを備えている。また船首側についても、船首構造を押航可能なように配慮するとともに、後進曳航用として15トンの曳航ビットを設けている。曳航ウインチやオイルフェンス揚収装置などは、すべて防爆化されている[1]

なお大規模災害時に総合指揮船としての機能を発揮できるよう、中型巡視船(PM)であるにもかかわらず、船橋後部にOIC室を設けている[1]

同型船[編集]

計画年度 番号 船名 進水 竣工 退役 所属
昭和52年度 PM-89 たかとり 1977年
(昭和52年)
12月8日
1978年
(昭和53年)
3月24日
2016年
(平成28年)
10月13日
横須賀
(第三管区)
昭和53年度 PM-94 くまの 1978年
(昭和53年)
11月2日
1979年
(昭和54年)
2月23日
2017年
(平成29年)
2月3日
高松
(第六管区)

登場作品[編集]

海猿 UMIZARU EVOLUTION
第1話と第2話に「たかとり」が登場。三浦半島沖でタンカー座礁し転覆する海難事故が発生したことを受け、現場海域に急行し消火活動にあたる。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 徳永陽一郎、大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空 (交通ブックス205)』成山堂書店、1995年、82-91頁。ISBN 4-425-77041-2 
  2. ^ a b c d e 「警備救難業務用船 (海上保安庁船艇の全容)」『世界の艦船』第800号、海人社、2014年7月、63頁、NAID 40020105550 
  3. ^ Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 387. ISBN 978-1591149545 

関連項目[編集]