くるみ割り人形 (ドイツ工芸品)
くるみ割り人形(くるみわりにんぎょう)は、木の実を割るために用いられる人形型の道具である。くるみに限らずヘーゼルナッツその他の木の実にも用いられる。
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[編集] 誕生
人間が木の実を常食としていたはるか昔から、様々な形状のくるみ割り器が考案されてきた。ベルヒテスガーデンの1650年の記録には"Nusbeiser"(くるみを噛むもの)という語が残っている。また、1735年にはテューリンゲン州ゾンネベルクでくるみ噛み人形が作られたとされる[1]。
現在知られているような形式の人形型のくるみ割り器が生まれたのは、1870年代頃で、現在のドイツ、ザクセン州のエルツ山地地方のザイフェンという小さな村でのことであったとされる[2]。エルツ山地地方は、ザクセン州の州都ドレスデンの南、チェコとの国境沿いに位置し、幅約40km長さ約130kmにわたる標高700 - 800mの緩やかな山地地帯である。
最初のくるみ割り人形を制作したのは、ヴィルヘルム・フリードリッヒ・フュヒトナーで、このため彼は「くるみ割り人形の父」と呼ばれる。最初のモデルは軽騎兵、消防士、山林監視官であった。彼のフュヒトナー工房はそれ以降「くるみ割り人形の生家」と見なされ、フュヒトナー工房の人形の箱のみにその一文が明記されている。フュヒトナー工房では、伝統的デザインのくるみ割り人形を制作し続け、現在に至っている。
[編集] くるみ割り人形の概要
[編集] 構造
直立した人間型で、顎の部分が開閉するようになっており、そこから後ろへレバーが出ている。レバーを上に引き上げると大きく口を開け、そこへ木の実を挟み、レバーを下方へ押し下げることにより木の実を砕く。
[編集] 素材
制作者により少々異なるが、多くはドイツトウヒ(針葉樹)、カエデ、ブナ、トネリコ、セイヨウボダイジュ等を本体に用い、髪やひげにはウサギの毛を使用する。
[編集] 大きさ
実用のものは通常約38 - 42cmであるが、現在ではより小さく種々のデザインのものも多く作られている。また、逆に巨大なサイズを制作するメーカーもある。
[編集] 意匠
伝統的なモデルとしては、王様、兵隊の他に山林監視官、消防士、警官等があり、その他に、夜警、キノコ採り、サンタクロースといったものも多くある。伝統的なモデル達が生まれた背景には、一般庶民達の支配者階級に対する反発心や、ささやかな抵抗によるうっぷん晴らしがあるという説もある。しかしながら、昔は支配者階級のみならず、差別を受けた人々をモデルにしたものも多く見られた。いずれにしても、堅い木の実の殻を口(歯)で砕くという役割上、ほとんどが男性をモデルとしたものであった。
時代と共に、昔のようないかめしい怖い表情のものは少なくなり、優しい表情のデザインのものが多くなっている。
[編集] 王冠
伝統的なデザインの王様の王冠は、金色のギザギザ模様のついた黒い塊を頭に載せている。これは鉱夫の帽子がヒントとなっていると言われる。
くるみ割り人形が作られたエルツ山地地方は、「鉱石の山」という意味を持ち、銀、錫、少量のコバルトなどの鉱石が産出された地域であった。男性住民の多くは鉱夫等として鉱業に携わっており、鉱夫達は黒い筒状の帽子を被っていた。くるみ割り人形の王冠は、これに金色のギザギザ模様をつけたものとされる。現在でも王様型のくるみ割り人形の多くは、この王冠の形状を踏襲している。
[編集] 色
最も多い色の組み合わせは黒い王冠、赤い服、黄色のズボン、黒いブーツである。これはフュヒトナー工房の最初の王様のくるみ割り人形の色に由来するとされる。現在は様々な色あいのものが作られており、木目調のものもある。
[編集] 工房
ザイフェンを中心にして周辺の村や町に200 - 300の工房やメーカーが点在している。その多くが、くるみ割り人形だけでなく、そのほかの伝統的人形、クリスマス、イースター用品、ミニチュアも合わせて制作している。
[編集] 童話
くるみ割り人形を題材とした童話は多数あり、中でもE.T.A.ホフマンの「くるみ割り人形とネズミの王様」や、ハインリヒ・ホフマンの「くるみ割り人形の王様と可哀想なラインホルト」が有名である。チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」は、E.T.A.ホフマンによる「くるみ割り人形とねずみの王様」を原作とするものである。