お茶漬の味

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お茶漬の味
The Flavor of Green Tea over Rice
監督 小津安二郎
脚本 野田高梧
小津安二郎
製作 山本武
出演者 佐分利信
木暮実千代
鶴田浩二
淡島千景
津島恵子
音楽 斎藤一郎
撮影 厚田雄春
配給 松竹
公開 日本の旗 1952年10月1日
上映時間 115分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 麦秋
次作 東京物語
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お茶漬の味』(おちゃづけのあじ)は、小津安二郎監督による1952年の日本映画。

概要[編集]

麦秋』に続いて小津安二郎と野田高梧が共同で脚本を執筆し映画化した作品。地方出身の素朴な夫と夫にうんざりする上流階級出身の妻、二人のすれ違いと和解が描かれる。

もともと本作は、小津が1939年に中国戦線から復員したあとの復帰第一作としてとるつもりで書いたシナリオであった。小津によれば、初めに考えたタイトルは『彼氏南京に行く』で、内容は「有閑マダム連がいて、亭主をほったからしにして遊びまわっている。この連中が旅行に行くと、その中の一人の旦那が応召されるという電報が来る。さすがに驚いて家に帰ると亭主は何事もないようにグウグウ寝ていて、有閑マダムは初めて男の頼もしさを知るという筋」だったという。[1]この内容が内務省による事前検閲をパスしなかったため、映画化を断念したものだった。この映画の内容の事前検閲はそのころ作られた映画法によるものだが、戦争に反対するような要素が何もない本作すら、「戦時下の非常事態にブルジョア婦人たちが遊び歩く」ことや「赤飯を食べるべき出征の前晩にお茶漬けなどを食べる」などの程度の問題でも映画製作が許されない時代になったことで当時の映画人たちに衝撃を与えた事件だった。[2]このお蔵入りのシナリオを引っ張り出した小津と野田は戦中と戦後の変化にあわせて設定を変更した。主人公夫婦がよりを戻すきっかけも夫の応召でなく、ウルグアイモンテビデオ赴任に変わっている。[3]

マキノ雅弘監督の『離婚』(1952年)で共演したばかりの佐分利信木暮実千代を夫婦に配し、笠智衆など小津作品常連のベテランと鶴田浩二らの若い顔ぶれを合わせて脇を固めた。「社長」役で出演している石川欣一は本職の俳優ではなく、英米文学の翻訳でも知られたジャーナリスト。上原葉子加山雄三の母)は戦前の名子役「小桜葉子」であるが、上原謙と結婚した後だったため特別出演という形で名を連ねた。他にも北原三枝(後の石原裕次郎夫人)が端役で出演している。本作では野球(後楽園球場でのロケ)、パチンコ、競輪など昭和20年代の庶民の娯楽、ラーメンやトンカツ(「カロリー軒」は小津監督の他作品にも登場)といった当時の人々の食生活がうかがえる。小津は後に「ぼくは女の眼から見た男、顔形がどうだとか、趣味がいいとか言う以外に、男には男の良さがあるということを出したかった。しかしあまり出来のいい作品ではなかった。」[4]と振り返っている。

あらすじ[編集]

会社勤務の佐竹茂吉(佐分利信)は長野出身で質素な生活を好む。妻の妙子(木暮実千代)とはお見合い結婚だが、上流階級出身の妙子にとって夫の質素さが野暮にしか見えず、学生時代の友人たちである雨宮アヤ(淡島千景)、黒田高子(上原葉子)、姪っ子の山内節子(津島恵子)らと遊び歩いて憂さをはらしている。茂吉はそんな妻の気持ちを知りながらも、あえて触れないようにしていた。ところが、節子がお見合いの席から逃げ出したことをきっかけに、茂吉と妙子が衝突する。妙子は口をきかなくなり、あげくのはてに黙って神戸の友人のもとへ出かけてしまう。一方の茂吉はウルグアイでの海外勤務が決まって羽田から出発するが、それを聞いても妙子は帰ってこない。茂吉が発った後、家に帰ってきた妙子にさすがの友人たちも厳しい態度をとる。平然を装う妙子だったが、茂吉の不在という現実に内心は激しく動揺していた。そこへ突如茂吉が夜中になって帰ってくる、飛行機のエンジントラブルだという。喜ぶ妙子に茂吉はお茶漬けを食べたいという。二人で台所に立って準備をし、お茶漬けを食べる二人。お互いに心のうちを吐露し、二人は和解する。夫婦とはお茶漬なのだと妙子を諭す茂吉。妙子は初めて夫のありがたさ、結婚生活のすばらしさに気づく。一方、お見合いを断った節子は若い岡田登(鶴田浩二)にひかれていくのだった。

スタッフ[編集]

  • 監督:小津安二郎
  • 脚本:野田高梧・小津安二郎
  • 製作:山本武
  • 撮影:厚田雄春
  • 美術:浜田辰雄
  • 編集:浜村義康
  • 録音:妹尾芳三郎
  • 照明:高下逸男 
  • 監督助手:山本浩三
  • 撮影助手:川又昂
  • 音楽:斎藤一郎

キャスト[編集]

作品データ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『小津安二郎 僕はトウフ屋だからトウフしかつくらない』(人生のエッセイ)、日本図書センター、2010年、p112
  2. ^ 佐藤忠男、『日本映画史2 1941-1959』、岩波書店、p27
  3. ^ 松竹映像版権室編、『小津安二郎映画読本(新装改訂版)』、フィルムアート社、1993年、p90
  4. ^ 「小津安二郎 自作を語る」(キネマ旬報別冊 小津安二郎 人と芸術 1964年2月増刊号)

参考文献[編集]

  • 松竹映像版権室編、『小津安二郎映画読本(新装改訂版)』、フィルムアート社、1993年

外部リンク[編集]