あきづき型護衛艦 (2代)
| あきづき型護衛艦 | ||
|---|---|---|
DD-115 あきづき |
||
| 艦級概観 | ||
| 艦種 | 護衛艦(DD:汎用護衛艦) | |
| 建造期間 | 2009年 - | |
| 就役期間 | 2012年 - | |
| 前級 | DD:たかなみ型護衛艦 | |
| 次級 | 最新 | |
| 性能諸元 | ||
| 排水量 | 基準 5,050トン | |
| 満載 6,800トン | ||
| 全長 | 150.5m | |
| 全幅 | 18.3m | |
| 深さ | 10.9m | |
| 吃水 | ||
| 機関 | COGAG方式(64,000PS) 2軸推進 | |
| SM1Cガスタービンエンジン | 4基 | |
| 速力 | 最大30kt | |
| 乗員 | 約200名 | |
| 兵装 | Mk.45 62口径5インチ単装砲 | 1基 |
| 高性能20mm機関砲(CIWS) | 2基 | |
| 90式 SSM 4連装発射筒 | 2基 | |
Mk.41 VLS (32セル)• ESSM 短SAM |
1基 | |
| HOS-303 3連装短魚雷発射管 | 2基 | |
| 艦載機 | SH-60K哨戒ヘリコプター | 1/2機 |
| C4I | MOFシステム(SUPERBIRD B2) | |
| 海軍戦術情報システム (OYQ-11 ACDS+リンク 11/14/16) |
||
| FCS-3A FCS | ||
| レーダー | FCS-3A 多機能レーダー (捜索用、FC用アンテナ各4面) |
1基 |
| OPS-20C 航海レーダー | 1基 | |
| ソナー | OQQ-22 統合ソナー・システム (バウ・ソナー+OQR-3 TACTASS) |
|
| 電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-3D 統合電子戦システム | |
| Mk 36 SRBOC 対抗手段システム (Mk.137 チャフ・フレア発射機×4基) |
||
| 言語 | 表記 | |
| 日本語 | あきづき型護衛艦 | |
| 英語 | Akizuki class destroyer | |
あきづき型護衛艦(あきづきがたごえいかん)は、海上自衛隊が取得中の新型の汎用護衛艦である。1番艦の進水前は、1番艦の予算計上年度に因んだ19DDや、基準排水量に因んだ5000トン型護衛艦と呼称されていた。
なお、「あきづき」のネームシップを持つ艦型は、1960年就役の初代あきづき型護衛艦に続いて2代目であり、漢字表記である旧海軍の秋月型駆逐艦を含めれば3代目になる。本艦型は、秋月型が防空駆逐艦という性格を同じくするところから、艦名を継承した。
目次 |
[編集] 開発の経緯
はつゆき型からあさぎり型、むらさめ型、たかなみ型と建造されてきた、対空・対潜・対艦・ヘリコプター搭載と一通りの能力をもった汎用護衛艦(DD)は、数量の上でも能力の上でも海上自衛隊の戦力の中核となる艦種であり、諸外国の同種の艦船の進歩にあわせて、これら汎用護衛艦も着々とその能力を向上させてきた。
一方20世紀から21世紀へと世紀をまたぐ頃に諸外国の海軍で計画された戦闘艦、例えばイギリス海軍の45型駆逐艦、ドイツ海軍のザクセン級フリゲート、オランダ海軍のデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート、スペイン海軍のアルバロ・デ・バサン級フリゲートなどでは、次のような新たな能力が備えられていた。
- 半導体技術の進歩で小型化と高性能化が進んだ、フェーズドアレイレーダーを中心とした同時多目標への対処が可能な戦闘システム
- 船体外形の傾斜や、廃熱、水中雑音などへの対策による相応のステルス性
- 東西冷戦が終結した後に顕在化しつつある、沿海域での作戦への対処能力
- 乗員の居住性の更なる向上、女性乗員への配慮、あるいは海兵隊や特殊部隊の便乗で必要な余裕ある空間の確保
海上自衛隊も各種の要素技術を研究しており、それらを盛り込んだ次世代の汎用護衛艦として計画されたのが本型である。
当初は2006年度予算での1艦建造が予定され18DDと呼ばれてきたが、防衛費縮減の流れを受けて1年延期され、1番艦の予算は2007年度予算に盛り込まれることとなった。要求された848億円に対し750億円の予算が認められた。2008年度では2番艦の予算が承認されており、2009年度は翌年度分との一括発注による予算削減目的のため2隻で1,515億円が要求され1,451億円で2隻とも予算が成立している。
本級は上記の先進各国の最新鋭水上戦闘艦と比しても遜色のない先進性を有するが、一方で以下のような項目については導入が見送られた。
- 革新的な新型船型や主船体の痩せ馬(溶接構造で作られた鋼船の外板が内側に歪む現象、あばらの浮き出た馬のように見える)を防ぐ複合素材被覆船体等によるステルス性能等の向上策
- 統合推進動力の採用や先進推進システムの採用による全出力域に渡る能力の向上
- 艦載ミサイルの国産化。SeaRAM等の近接防空能力の向上
また、他国にはない日本独自の要求として、ミサイル防衛(MD)対応任務を付与されたイージス艦の対空、対水上、対潜護衛任務がある。[1]
[編集] 船体・機関
当初、概算要求ではたかなみ型によく似た船体ラインや各種艤装の配置を持ち、よりステルス性の考慮された新型艦として要求されていた。しかし、減額査定によりたかなみ型とほぼ同一の船体で、艦首部分を延長し、艦橋を短くした船体となった。
[編集] 機関
ガスタービン機関4基を装備しCOGAG方式により運用、30ノット超の速力を発揮する。被弾時の生残性を高めるため、左右軸の主機は機械室を挟んで前後に離して配置される。
装備するガスタービンエンジンはロールス・ロイス社製のSM1Cで、以降のシリーズ艦もすべて同一である。また、機械室の省力化も図られる。
[編集] ステルス性
あたご型イージス護衛艦と同様の塔型の新型マストと平面固定型の対空レーダーを採用し、上部構造物を舷側まで拡大するなど、前級のたかなみ型と比べステルス性の向上が図られている。
当初防衛省の平成20年度予算案の概要[2]に掲載されていた外観図には、艦載艇や対艦誘導弾の発射筒などを覆うスクリーンや、甲板上の艤装物を隠すブルワークが設置されていたが、平成21年度予算案の概要に掲載されている図[3]ではスクリーンのない剥き出しの外部装備になっていた。このステルス性に対する取り組みの変化は、予算の縮減を受けてのものと見られている。
[編集] 装備
[編集] C4Iシステム
本型は、新開発のOYQ-11戦術情報処理装置を中核としたシステム艦として構築されている。
本型の新戦闘指揮システム(Advanced Technology Combat System:ATECS) の中核となるOYQ-11は、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦のOYQ-10を汎用護衛艦向けにカスタマイズしたものと言える。現代海軍C4Iシステムの標準にあわせて、商用オフザシェルフ化されたQ-70ワークステーションによる分散コンピューティング方式を採用しており、Q-70と兵器・センサーをローカル・エリア・ネットワークによって連接することで各武器・センサー・サブシステムが構成され、これらのサブシステムはNOYQ-1B統合ネットワークによって連接されている。ATECSは、OYQ-11サブシステム、FCS-3Aサブシステム、電子戦サブシステム、対潜戦サブシステムにより構成されている。
通信手段としては、通常の短波(HF)・超短波(VHF)・極超短波(UHF)の無線機のほか、統合データ・ネットワーク(JDN)や海軍戦術情報システム(NTDS)に参加できるように、リンク 11およびリンク 16に対応している。また衛星通信としては、スカパーJSATが提供する公用のSUPERBIRD B2およびSUPERBIRD D衛星通信、民間のインマルサット衛星通信、およびアメリカ軍のUHF-SATCOMに接続するためのUSC-42衛星通信機が搭載されている。
[編集] 対空戦闘システム
詳細は「FCS-3」を参照
本型の特長は、FCS-3A射撃指揮システムを中核として、僚艦防空(LAD)が可能な対空戦闘システムを構築している点にある。
僚艦防空(Local Area Defense)とは、自衛に徹する個艦防空と、艦隊を護衛する艦隊防空の中間的な作戦であり、下記のような要件を必要とする。
本型では、C4ISRシステムとしてFCS-3A、艦対空ミサイルとしてESSMを採用している。
- FCS-3A
- 多機能レーダーと射撃指揮システムによって構成される武器システムである。ひゅうが型に搭載されたFCS-3を元にするが、レーダーについてはガリウム・ナイトライド素子の採用による出力増大、射撃指揮システムについては横過目標を処理できるアルゴリズム追加などの改良が施されている。
- ESSM
- 従来のシースパロー個艦防空ミサイルをもとに射程・機動性を強化したもので、公表諸元表においては、前世代の艦隊防空ミサイルを凌駕する性能を備えている。本型では、MK41VLSの8セル(32発)に装備している[1]。
- なお、当初は99式空対空誘導弾をベースにした終末アクティブ誘導方式艦対空ミサイル(AHRIM)の「XRIM-4」を装備する計画だったが、こちらは昨今の厳しい開発予算等により開発が中止されたためキャンセルされている。
僚艦防空を任務として開発された海外の艦級としては、アメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート、ノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲートがある。前者は艦対空ミサイルに、後者はC4ISRシステムに重点を置いており、本型は後者に近い方針を採択した。
また、近接防空火器(CIWS;Close-In Weapon System)としては高性能20mm機関砲2基が搭載される。2基という搭載数は、たかなみ型までと同じだが、格納庫上のCIWSは基部が露出した状態からあたご型(イージス艦)などと同様に改められている。なお、戦術情報処理装置に対して20mm機関砲が依存する割合は必要最小限であり、基本的には完結・独立したシステムとして機能する。
[編集] 対潜システム
従来艦同様、アスロック対潜ミサイルが前部上甲板のVLS内に、HOS-303 3連装短魚雷発射管が両舷各1基装備される。
二番艦以降は従来の垂直発射式アスロック(VLA)に替え、国産の07式垂直発射魚雷投射ロケットが搭載される。
[編集] 対水上戦システム
対艦誘導弾(艦対艦ミサイル)には、従来通りに90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が搭載される。
[編集] 砲熕兵器システム
詳細は「Mk 45 5インチ砲」を参照
従来の伊オート・メラーラ社製の127ミリ速射砲ではなく、あたご型と同様に米BAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツ社製のMk 45 Mod 4 5インチ砲を採用する。
[編集] ヘリコプター
哨戒ヘリコプター(SH-60JまたはSH-60K)は常用1機だが、格納庫は、たかなみ型より拡大され、哨戒ヘリコプター2機または、MCH-101掃海・輸送ヘリコプター1機に対応可能。
[編集] イージス艦の対空防御補完について
本級の対空装備充実の理由に「ミサイル防衛構想において、こんごう型イージス護衛艦が弾道ミサイル防衛に専念する際に生じる対航空機や対艦ミサイルへの防空の隙を補完するため、単に在来艦の置き換えにとどまらず、個艦防空能力のみならず一定程度の艦隊防空能力をも備えた従来よりも強力な汎用護衛艦が求められた」とされる。
こんごう型等のイージスレーダーの弾道ミサイル対処能力と航空機・対艦ミサイル対処能力は当初から並立できるものとされており、またその検証のために2006年6月22日にタイコンデロガ級イージス巡洋艦「シャイロー」がRIM-161スタンダード・ミサイル3 (SM-3)ブロックIAとSM-2によって、模擬弾道ミサイル1つと模擬対空目標2つの同時撃墜に成功しており、同様の試験は「レイク・エリー」でも成功している。
アメリカ海軍太平洋域のタイコンデロガ級イージス巡洋艦・アーレイ・バーク級イージス駆逐艦と海自のイージス護衛艦は共に「ABMD3.6」という実験艦と同じか、又はより高いレベルでのイージスシステムへ更新される予定となっており、イージスが弾道弾に対処する時には従来型対空防御に有意な能力低下があるという説には疑問が提起されている[2]。
ただし、この点についてはイージス艦のフェーズドアレイレーダーがSPY-1Dに到って天頂方向への捜索能力が強化されたのを含めて、天空の内、水平視野100度の覆域を弾道弾捜索に必要な区域だけに出力を集中させる方法によってであり、BMD3.6では衛星のリンクなどイージスシステム以外の向上化と、操作方法を操作員の技量によって対応していたものを自動化した形態であるために旧来のイージス艦でミサイル防衛に改良される以前の海自イージス艦がBMD演習に参加出来た由来を考えると、同一レーダー面同一象限の異種目標に対する対処能力は限定的にならざるを得ないと推察されるのが、対抗する意見である。(MD目標方向アンテナ面80度以外なら他の3面のレーダーで複数目標追尾能力が使える)
[編集] 同型艦
本型は、ミサイル防衛対応を含む防空を重視したミサイル護衛艦(DDG)を中心とするグループ(第5~8護衛隊)に1隻ずつ編入し運用する構想があるため、当面4隻の建造が予想される。
| 艦番号 | 艦名 | 建造 | 起工 | 進水 | 竣工 | 所属 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| DD-115 | あきづき | 三菱重工業 長崎造船所 |
2009年 (平成21年) 7月17日 |
2010年 (平成22年) 10月13日 |
2012年 (平成24年) 3月14日 |
第1護衛隊群 第5護衛隊 |
| DD-116 | てるづき | 2010年 (平成22年) 6月2日 |
2011年 (平成23年) 9月15日 |
2013年 (平成25年) 3月予定 |
||
| 平成21年度計画 2246号 |
21DD | 2011年 (平成23年) 5月18日 |
2012年 (平成24年) 9月予定 |
2014年 (平成26年) 3月予定 |
||
| 平成21年度計画 2247号 |
21DD | 三井造船 玉野事業所 |
2011年 (平成23年) 6月14日 |
2012年 (平成24年) 8月予定 |
2014年 (平成26年) 3月予定 |
[編集] その他
- 2007年11月、本型の機関選定を巡り当時の守屋武昌防衛事務次官が山田洋行に便宜供与を計るため、SM1Cの対抗機種であるGE・アビエーション社のLM2500に有利な取り計らいを行った疑いがあると一部マスコミが報じている[3]。
[編集] 脚注
- ^ 世界の艦船増刊 自衛艦100のトリビア 57頁
- ^ 多田智彦著 『進化する海自汎用護衛艦』軍事研究 2008年4月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー
- ^ 護衛艦エンジンで便宜か 守屋前次官、検討要請 47news 2007年11月30日
[編集] 参考文献
- 編集部「「19DD」の技術的特徴」、『世界の艦船』第732集、海人社、2010年11月、 84-99頁。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
|
|||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||