β鉄

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β鉄(ベータてつ、βFe)とは、高純度の(純鉄)において、770~911℃の温度領域にあるとみなされていた鉄の相(組織)である[1]

概要[編集]

純鉄にはA2点(770℃)、A3点(912℃)、A4点(1394℃)の3つの変態点があるが、結晶構造解析が未発達だった時代では、A2点以下の強磁性体の鉄をα鉄(フェライト)、A2点以上A3点以下である常磁性体の鉄をβ鉄、そしてA3点以上A4点以下の鉄をγ鉄、A4点以上の鉄をδ鉄としていた。しかしその後の解析で、α鉄・β鉄は両方とも同じ体心立方格子構造をとる、すなわちA2点においては相変態が起こっておらず、α鉄とβ鉄の結晶構造は同じであるということがわかった。このような経緯で現在ではβ鉄はα鉄に統一されたため、『β鉄』という用語は用いられておらず、α鉄の次の相はβを飛ばしたγ鉄となっている。

なお、A2点は純鉄におけるキュリー温度で、鉄の磁性が変化する。

出典[編集]

  1. ^ 石田 四郎・和田 次郎、『新制 機械材料』増補第1版、オーム社、1957、84頁

関連項目[編集]