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[[皮膚]]や[[粘膜]]に付着した場合、不快な刺激や痛みを与え、[[咳]]・[[クシャミ]]・落涙・嘔吐などの症状を発現させる<ref>[http://www.nihs.go.jp/hse/c-hazard/bc-info/cagent/tear.html 国立医薬品食品衛生研究所 催涙剤]</ref>。効果時間は数分から数十分とされ、時間経過による拡散や自然分解、あるいは[[涙]]や洗眼、中和剤の使用などで除去すれば一般的には傷跡、[[後遺症]]を残すことがないとされる<ref name="no_chemical_agent_injury">[http://www.group-midori.co.jp/logistic/bc/chemistry/no_chemical_agent_injury.php 緊急災害医療支援学/無傷害化学剤,自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之]</ref>。また、即効性があり、比較的低濃度でも効果を発揮するが、致死量が高いため、主に[[暴動]]の[[暴動鎮圧|規制・鎮圧]]や化学兵器防護の訓練に使われている<ref name="no_chemical_agent_injury"/>。 |
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1925年の[[ジュネーヴ議定書 (1925年)|ジュネーヴ議定書(窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガスおよび細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書)]]においては、戦争における毒ガス使用の禁止が宣言された。[[1997年]]に発効した[[化学兵器禁止条約]]では、1条において暴動鎮圧剤を戦争における戦闘行為で用いることが禁止されているが、2条9項において「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」の使用は、明示的に条約の対象から除外されている<ref>[http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/cwc/files/109joyaku_wabun.pdf 化学兵器禁止条約]</ref>。 |
1925年の[[ジュネーヴ議定書 (1925年)|ジュネーヴ議定書(窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガスおよび細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書)]]においては、戦争における毒ガス使用の禁止が宣言された。[[1997年]]に発効した[[化学兵器禁止条約]]では、1条において暴動鎮圧剤を戦争における戦闘行為で用いることが禁止されているが、2条9項において「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」の使用は、明示的に条約の対象から除外されている<ref>[http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/cwc/files/109joyaku_wabun.pdf 化学兵器禁止条約]</ref>。 |
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[[ベトナム戦争]]では[[アメリカ軍]]が[[クロロベンジリデンマロノニトリル]]を壕内に投入して、内部にひそむ戦闘員を外部に出させた。非致死剤とはいえ1[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]に10g以上あれば致死効果があり、遅延型[[アレルギー]]などの後遺症も残す可能性が指摘されている。 |
[[ベトナム戦争]]では[[アメリカ軍]]が[[クロロベンジリデンマロノニトリル]]を壕内に投入して、内部にひそむ戦闘員を外部に出させた。非致死剤とはいえ1[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]に10g以上あれば致死効果があり、遅延型[[アレルギー]]などの後遺症も残す可能性が指摘されている。 |
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なお催涙剤は[[軍隊]]や[[警察]]用以外に[[防犯装備|護身・防犯用途]]として市販されており、 |
なお催涙剤は[[軍隊]]や[[警察]]用以外に[[防犯装備|護身・防犯用途]]として市販されており、日本でも[[催涙スプレー]]として個人で購入することができる。ただし、正当な理由なく隠匿して所持していた場合には、危害を加えうる器具の隠匿所持として、[[軽犯罪法]]違反に問われる場合もある<ref>{{Cite web|url=http://www.sankei.com/west/news/150508/wst1505080034-n2.html |title=催涙スプレー規制“野放し”「護身用品」難しく 業者は自主規制 |author= |date=2015-05-08 |work= |publisher=産経新聞 |accessdate=2017-05-16}}</ref>。 |
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アメリカでは[[フッ化スルフリル]]を使った住宅[[燻煙]]の際、内部に人が残っていないことを確認する目的で催涙効果を持つ[[クロルピクリン]]を使用する。 |
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== 脚注 == |
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* 『化学』Vol,52 No,11(1997):特集「化学兵器」([[化学同人]]) |
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== 関連項目 == |
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* [[M47催涙手榴弾]] |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1862.pdf 遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 日本学術会議 平成13年7月23日] |
* [http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1862.pdf 遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 日本学術会議 平成13年7月23日] |
2019年9月12日 (木) 02:26時点における版
催涙剤(さいるいざい)は、非致死性のガス化学兵器である[1]。一般には催涙ガス(英: tear gas)とも呼ばれる。催涙剤を詰めた弾丸を催涙弾と呼ぶ。
概要
皮膚や粘膜に付着した場合、不快な刺激や痛みを与え、咳・クシャミ・落涙・嘔吐などの症状を発現させる[2]。効果時間は数分から数十分とされ、時間経過による拡散や自然分解、あるいは涙や洗眼、中和剤の使用などで除去すれば一般的には傷跡、後遺症を残すことがないとされる[3]。また、即効性があり、比較的低濃度でも効果を発揮するが、致死量が高いため、主に暴動の規制・鎮圧や化学兵器防護の訓練に使われている[3]。
1925年のジュネーヴ議定書(窒息性ガス、毒性ガスまたはこれらに類するガスおよび細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書)においては、戦争における毒ガス使用の禁止が宣言された。1997年に発効した化学兵器禁止条約では、1条において暴動鎮圧剤を戦争における戦闘行為で用いることが禁止されているが、2条9項において「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」の使用は、明示的に条約の対象から除外されている[4]。
歴史的には第一次世界大戦中の1914年にフランス軍が使用を開始している[5](一説には臭化キシリル(Xylyl bromide))[6]。次いでドイツ軍でも開発の上、使用されることになった[6]。
ベトナム戦争ではアメリカ軍がクロロベンジリデンマロノニトリルを壕内に投入して、内部にひそむ戦闘員を外部に出させた。非致死剤とはいえ1m2に10g以上あれば致死効果があり、遅延型アレルギーなどの後遺症も残す可能性が指摘されている。
なお催涙剤は軍隊や警察用以外に護身・防犯用途として市販されており、日本でも催涙スプレーとして個人で購入することができる。ただし、正当な理由なく隠匿して所持していた場合には、危害を加えうる器具の隠匿所持として、軽犯罪法違反に問われる場合もある[7]。
アメリカではフッ化スルフリルを使った住宅燻煙の際、内部に人が残っていないことを確認する目的で催涙効果を持つクロルピクリンを使用する。
催涙剤の散布は、地上からの投擲や発射により行われてきたが、2018年、イスラエル警察は催涙弾を搭載したドローンを導入。同年3月30日にガザ地区で行われたデモ隊との衝突で初使用されている[8]。
警察の特殊部隊や軍隊では催涙剤が充満した環境でも適切に行動する必要があるため、効果を減じたガスを屋内に充満させ素早くマスクを装着する訓練などを行っている。
主な催涙ガス
カッコ内のアルファベットはアメリカ軍の略号
- 催吐剤
- アダムサイト(DM)
- くしゃみ剤
- ジフェニルシアノアルシン(DC)
- ジフェニルクロロアルシン(DA)
- 催涙剤
- ブロモベンジルシアニド(CA)[9]
- クロロアセトフェノン(CN)[9]:旧日本軍においては「みどり剤」として呼称して保有[1]。
- クロロベンジリデンマロノニトリル(CS)[9]
- ジベンゾ-1,4-オキサゼピン(CR)
脚注
- ^ a b 遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 日本学術会議 平成13年7月23日
- ^ 国立医薬品食品衛生研究所 催涙剤
- ^ a b 緊急災害医療支援学/無傷害化学剤,自衛隊中央病院 箱崎 幸也・越智 文雄・宇都宮 勝之
- ^ 化学兵器禁止条約
- ^ Gerard J. Fitzgerald (2008年). “Chemical Warfare and Medical Response During World War I”. Am J Public Health. 2008 April; 98(4): 611–625.. 2016年2月28日閲覧。
- ^ a b Michael Duffy (2009年8月22日). “Weapons of War - Poison Gas”. firstworldwar.com. 2010年8月26日閲覧。
- ^ “催涙スプレー規制“野放し”「護身用品」難しく 業者は自主規制”. 産経新聞 (2015年5月8日). 2017年5月16日閲覧。
- ^ “ガザ大規模衝突で15人死亡、1400人負傷 デモに住民数万人”. AFP (2018年3月31日). 2018年3月30日閲覧。
- ^ a b c アンソニー・トゥ(Anthony T. Tu)「化学兵器の毒作用と治療」『日本救急医学会雑誌』、日本救急医学会、1997年、2016年2月28日閲覧。
参考文献
- アンソニー・トゥ、井上尚英『化学・生物兵器概論』(じほう、2001年)
- アンソニー・トゥ『中毒学概論』(じほう、1999年)
- 『改訂版 症例で学ぶ中毒事故とその対策』(じほう)
- 内藤裕史『中毒百科 改訂第2版』(南江堂、2001年)
- 『化学』Vol,52 No,11(1997):特集「化学兵器」(化学同人)