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爬虫類と共通の祖先から進化した[[哺乳類]]は、はじめはこの4色型色覚をもっていたが、[[中生代]]の哺乳類は夜間の活動に適応するため[[桿体細胞]]が発達し、昼間活動することが少なかったため4種類あった[[錐体細胞]]のうち2種類が失われ紫外線を吸収できなくなり、[[2色型色覚]]となった。実際[[イヌ]]、[[ネコ]]、[[ウシ]]、[[ウマ]]などの多くの哺乳類は、2色型色覚を持ち、これらの生物は波長420~470ナノメートルの青い光を吸収する青錐体と、緑から赤にかけての波長の光に対応した赤錐体しか錐体細胞を持っていない。ゆえに、ヒトでいう赤緑[[色盲]]に類似した色世界に生きていることとなる。
爬虫類と共通の祖先から進化した[[哺乳類]]は、はじめはこの4色型色覚をもっていたが、[[中生代]]の哺乳類は夜間の活動に適応するため[[桿体細胞]]が発達し、昼間活動することが少なかったため4種類あった[[錐体細胞]]のうち2種類が失われ紫外線を吸収できなくなり、[[2色型色覚]]となった。実際[[イヌ]]、[[ネコ]]、[[ウシ]]、[[ウマ]]などの多くの哺乳類は、2色型色覚を持ち、これらの生物は波長420~470ナノメートルの青い光を吸収する青錐体と、緑から赤にかけての波長の光に対応した赤錐体しか錐体細胞を持っていない。ゆえに、ヒトでいう赤緑[[色盲]]に類似した色世界に生きていることとなる。


ヒトを含む[[旧世界]]の[[霊長類]]([[狭鼻下目]])の祖先は、約3,000万年前、[[X染色体]]に新たな長波長タイプの錐体視物質の[[遺伝子]]が出現し、[[X染色体]]を2本持つメスのみの一部が3色型色覚を有するようになり、さらに[[ヘテロ接合体]]のメスにおいて[[相同組換え]]による[[遺伝子重複]]の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は[[果実]]等の発見に有利だったと考えられる。狭鼻下目の[[マカクザル]]に色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトが狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる<ref>岡部正隆、伊藤啓 「[http://www.nig.ac.jp/color/barrierfree/barrierfree1-4.html 1.4 なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか]「第1回色覚の原理と色盲のメカニズム」 『細胞工学』7月号をWEBに掲載。</ref>。
ヒトを含む[[旧世界]]の[[霊長類]]([[狭鼻下目]])の祖先は、約3,000万年前、[[X染色体]]に新たな長波長タイプの錐体視物質の[[遺伝子]]が出現し、[[X染色体]]を2本持つメスのみの一部が3色型色覚を有するようになり、さらに[[ヘテロ接合体]]のメスにおいて[[相同組換え]]による[[遺伝子重複]]の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は[[果実]]等の発見に有利だったと考えられる。狭鼻下目の[[マカクザル]]に色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトが狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる<ref>[http://www.cudo.jp 岡部正隆、伊藤啓] 「[http://www.nig.ac.jp/color/barrierfree/barrierfree1-4.html 1.4 なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか]「第1回色覚の原理と色盲のメカニズム」 『細胞工学』7月号をWEBに掲載。</ref>。


== ヒトにおける4色型色覚 ==
== ヒトにおける4色型色覚 ==

2013年2月14日 (木) 13:04時点における版

4色型色覚(4しょくがたしきかく)とは、情報を伝えるために4つの独立したチャンネルを持つことをいう。4色型色覚を備えた生物については、任意のに対して同じ知覚影響を与える4つの異なる純粋なスペクトルの光の混合色を作ることができる。4色型色覚の通常の説明は、生物の網膜が異なる吸収スペクトルを備えた4種類の錐体細胞を含むということである。

概要

爬虫類鳥類などは、4色型色覚をもつと考えられている。これらの生物は、ヒトでいう赤錐体、緑錐体、青錐体のほかに、波長300~330ナノメートル紫外線光を感知できる錐体網膜細胞を持つ。ただし、現在の爬虫類は3色型2色型、または色覚を持たないものもある。

爬虫類と共通の祖先から進化した哺乳類は、はじめはこの4色型色覚をもっていたが、中生代の哺乳類は夜間の活動に適応するため桿体細胞が発達し、昼間活動することが少なかったため4種類あった錐体細胞のうち2種類が失われ紫外線を吸収できなくなり、2色型色覚となった。実際イヌネコウシウマなどの多くの哺乳類は、2色型色覚を持ち、これらの生物は波長420~470ナノメートルの青い光を吸収する青錐体と、緑から赤にかけての波長の光に対応した赤錐体しか錐体細胞を持っていない。ゆえに、ヒトでいう赤緑色盲に類似した色世界に生きていることとなる。

ヒトを含む旧世界霊長類狭鼻下目)の祖先は、約3,000万年前、X染色体に新たな長波長タイプの錐体視物質の遺伝子が出現し、X染色体を2本持つメスのみの一部が3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は果実等の発見に有利だったと考えられる。狭鼻下目のマカクザルに色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトが狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる[1]

ヒトにおける4色型色覚

前述の通り、ヒトや近縁の霊長類は通常3種類の錐体細胞を持ち、3色型色覚であるが、ヒトにおいては4種類の錐体細胞を持った4色型色覚の女性が生まれうる[2]。世界の女性の2~3%は4色型色覚であると発表されている[3]。だが別の研究によれば女性で50%、男性で8%もの人々が4色の光色素を持つだろうという[2]。いずれにせよ、ヒトにおける4色型色覚の実態は解明しきれていない。

4色型色覚とされるヒトは、英国では2人確認されている。一人は1993年の研究で、"Mrs. M"と呼ばれるソーシャルワーカー[4]。もう一人は医師のSusan Hoganである[3]

世界中の人々の間での錐体色素遺伝子の変異は広範に及ぶが、最も一般的かつ顕著な4色型色覚は、色覚異常としてよく見られる赤緑色素の変異(赤色色弱)の女性キャリアと考えられる。これはX染色体の不活性化によって赤錐体が色弱であるものとそうでないものが混合することで起こる。

脚注

  1. ^ 岡部正隆、伊藤啓1.4 なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか「第1回色覚の原理と色盲のメカニズム」 『細胞工学』7月号をWEBに掲載。
  2. ^ a b Jameson, K. A., Highnote, S. M., & Wasserman, L. M. (2001). “Richer color experience in observers with multiple photopigment opsin genes.” (PDF). Psychonomic Bulletin and Review 8 (2): 244–261. PMID 11495112. http://www.klab.caltech.edu/cns186/papers/Jameson01.pdf. 
  3. ^ a b Mark Roth. “Some women may see 100,000,000 colors, thanks to their genes”. Pittsburgh Post-Gazette. 2006年9月13日閲覧。
  4. ^ “You won't believe your eyes: The mysteries of sight revealed”. The Independent. (2007年3月7日). http://news.independent.co.uk/world/science_technology/article2336163.ece 

関連項目

外部リンク