スズキ・F型エンジン
スズキ・F型エンジン | |
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F6A最終型。アルトのHA12Sに搭載。 タイミングベルト・ダイレクトイグニッション採用。 SOHC12バルブ・660CC | |
生産拠点 |
日本: 鈴木自動車工業 → スズキ インド: マルチ・スズキ・インディア |
製造期間 |
1977年6月-2022年7月 (海外向け) 1977年10月-2001年7月 (日本向け) |
タイプ |
直列3気筒SOHC6バルブ 直列3気筒SOHC9バルブ 直列3気筒SOHC12バルブ 直列3気筒DOHC12バルブ 直列4気筒SOHC8バルブ 直列4気筒SOHC16バルブ 直列4気筒DOHC16バルブ |
排気量 |
0.54リットル 0.55リットル 0.66リットル 0.8リットル 1.0リットル 1.1リットル |
スズキ・F型エンジンはかつてスズキが製造していた0.54L-1.1Lの小排気量車専用のガソリンエンジン。バルブ駆動方式は当初はSOHCのみ、のちにDOHC仕様が追加された。このうち、後述する3気筒796ccのF8B、およびF8C、F8Dを除き、1994年(平成6年)以降より順次K型エンジンに移行した。
沿革と概要[編集]
元々は初代ジムニーの小型登録車(小型普通車)版の大洋州(オセアニア)市場向けモデル(LJ80系[1])に搭載するエンジンが初出であり、1976年(昭和51年)に開発され、1977年(昭和52年)7月から2022年(令和4年)7月まで45年に渡り製造されていた同社初の自動車用量産4ストロークエンジンである。 その後、2ストロークエンジンを搭載した同社のフロンテが、昭和53年排ガス規制を通過できない恐れが発生した[2]。このため、直列4気筒であった4ストロークエンジンF8Aを基に、それからシリンダーを1気筒を減じて直列3気筒の543ccとしたF5Aが開発され、1978年(昭和53年)10月発売のLC31系フロンテ7-Sに搭載されたのを初出とし、スズキの各車種に広く搭載されるようになった。
上死点付近で、シリンダーヘッドと、ピストンに刻まれた窪み(燃焼室)がハート型を描き、燃焼ガスが渦状になることで燃焼速度を高めるという独特の構造を持っていた。ただし、この構造はマルチバルブ仕様では採用されていない。
550cc規格では他に直列3気筒・SOHC4バルブヘッドのF5B、660cc規格では直列3気筒のF6A、および直列4気筒でなおかつDOHC4バルブヘッドのF6B、他に、ジムニー1000や初代セルボの輸出仕様(SC100型)に搭載された直列4気筒のF10Aがあった[3]。
全アルミニウム合金化されたK型エンジンを後継とし、国内市場未投入のF8B/F8C/F8Dを除き、2000年代初頭に生産が終了している。 なお、3~4代目アルトのSOHCターボエンジンは後に新規格の5代目アルト、KeiやワゴンRに搭載されるものと同様であるが燃料噴射方式や圧縮比等細部が変更された。
共通仕様[編集]
F5A(SOHC 2バルブ 3気筒 キャブレター)[編集]
※初搭載車種:フロンテ7-S(4ストローク車)(LC31)
F5A(SOHC 2バルブ 3気筒 キャブレター式ターボ)[編集]
- 生産期間:1983年(昭和58年) - 1988年(昭和63年)
- 排気量:0.54 L (543 cc)
- 内径×行程:62.0 mm ×60.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:キャブレター
- 過給器:ターボチャージャー
※初搭載車種:セルボ(SS40)
F5A(SOHC 2バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
- 生産期間:1985年(昭和60年) - 1990年(平成2年)
- 排気量:0.54 L (543 cc)
- 内径×行程:62.0 mm ×60.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:EPI(電子制御燃料噴射)
- 過給器:ターボチャージャー
- 中間冷却器;空冷インタークーラー
※初搭載車種:アルトターボ(CA71V)
F5A(SOHC 3バルブ 3気筒 スーパーチャージャー)[編集]
- 生産期間:1987年(昭和62年)- 1989年(平成元年)
- 排気量:0.54 L (543 cc)
- 内径×行程:62.0 mm ×60.0 mm
- シリンダー数:3
- 過給器:ルーツ式スーパーチャージャー
※初搭載車種:キャリイ(DA71T/DB71T)
F5A(DOHC 4バルブ3気筒)[編集]
※初搭載車種:アルトツインカム(CA72V/CC72V)
F5A(DOHC 4バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
※初搭載車種:アルトワークス(CA72V/CC72V)
F5B(SOHC 4バルブ 3気筒)[編集]
※初搭載車種:セルボ(CG72V/CH72V)
- F5Aのショートストローク版
F5B(SOHC 2バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
- 生産期間:1988年 - 1990年
- 排気量:0.55 L (547 cc)
- 内径×行程:65.0 mm×55.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:EPI(電子制御燃料噴射)
- 過給器:ターボチャージャー
- 中間冷却器:空冷インタークーラー
- 最高出力:58PS(43kW)/6500rpm
- 最大トルク:7.4kg・m(73N・m)/4000rpm
※初搭載車種:アルトワークス(S系、ie系)(CL11V/CM11V)
F5B(DOHC 4バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
- 生産期間:1988年 - 1990年
- 排気量:0.55 L (547 cc)
- 内径×行程:65.0 mm×55.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:EPI(電子制御燃料噴射)
- 過給器:ターボチャージャー
- 中間冷却器:空冷インタークーラー
- 最高出力:64PS(47kW)/7500rpm
- 最大トルク:7.8kg・m(76N・m)/4000rpm
※初搭載車種:アルトワークス(RS系)(CL11V/CM11V)
F6A(SOHC 2バルブ 3気筒)[編集]
※初搭載車種:アルト(CN21S/CP21S/CL21V/CM21V)
F6A(SOHC 4バルブ 3気筒)[編集]
- 生産期間:1990年 - 2001年
- 排気量:0.66 L (657 cc)
- 内径×行程:65.0 mm×66.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:キャブレター
- 最高出力:52PS(38kW)/7000rpm
- 最大トルク:5.7kg・m(55.9N・m)/4500rpm
※初搭載車種:アルト(CN21S/CP21S/CL21V/CM21V)
F6A(SOHC 2バルブ 3気筒 ターボ)[編集]
※初搭載車種:キャリイKUターボ(DC51T/DD51T)
F6A(SOHC 2バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
- 生産期間:1990年 - 2001年
- 排気量:0.66 L (657 cc)
- 内径×行程:65.0 mm×66.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:EPI(電子制御燃料噴射)
- 過給器:ターボチャージャー
- 中間冷却器:空冷インタークーラー
- 最高出力:61PS(45kW)/6000rpmm
- 最大トルク:9.2kg・m(90.2N・m)/3500rpm
※初搭載車種:アルトワークス(ie系)(CN21S/CP21S)
F6A(DOHC 4バルブ 3気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
- 生産期間:1990年 - 1995年
- 排気量:0.66 L (657 cc)
- 内径×行程:65.0 mm×66.0 mm
- シリンダー数:3
- 燃料供給:EPI(電子制御燃料噴射)
- 過給器:ターボチャージャー
- 中間冷却器:空冷インタークーラー
- 最高出力:64PS(47kW)/6500rpm
- 最大トルク:8.7kg・m(85.3N・m)/4000rpm
※初搭載車種:アルトワークス(RS系)(CN21S/CP21S)
F6B(DOHC 4バルブ 4気筒 インタークーラー付ターボ)[編集]
※搭載車種:セルボモードSR-FOUR(CN31S/CP31S)のみである。
F8A(SOHC 2バルブ 4気筒)[編集]
※初搭載車種:ジムニー800(SJ20)及びその海外仕様(LJ80)
F8B(SOHC 2バルブ 3気筒)[編集]
※初搭載車種:マルチ・800(インド市場専売車種)
F8B(SOHC 2バルブ 3気筒 CNGエンジン)[編集]
※初搭載車種:マルチ・800(インド市場専売車種、2代目後期型のみ)
F8C (SOHC 2バルブ 3気筒)[編集]
F8D (SOHC 2バルブ 3気筒 CNGエンジン)[編集]
※初搭載車種:アルト800(後にアルトに改称)
F10A(SOHC 2バルブ 4気筒)[編集]
※初搭載車種:ジムニー1000(SJ40)
F10D(SOHC 4バルブ 4気筒)[編集]
※ 初搭載車種:マルチスズキ・ワゴンR
脚注[編集]
- ^ その後、日本市場向けモデルとしてSJ20系ジムニー8として投入された。
- ^ この際、スズキはダイハツ工業からAB型エンジンの供給を受けることとなった。のちに結果的には自社製2ストロークエンジンでも昭和53年排ガス規制をクリアしている。
- ^ カルタスやジムニー1300では、のちに開発されたG型エンジン系列が搭載された。